黒幕がいる。選択的夫婦別姓・全国陳情アクションの地方議会意見書大量生産の謎

選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」というのをご存じだろうか。私は今日の今日まで知りませんでした。自分で言うのもなんですが、それなりに世間の情報はネットが中心ではありますが、収集してきたつもりです。しかし、自分が知らない間に驚くべき計画が日本で進行していました。

日本で選択的夫婦別姓が政治問題になっていることはよく知られています。2020年末から保守派の安倍総理の退任によって、この問題に久しぶりに日が当たりました。

段々、世論の風向きが選択的夫婦別姓に追い風になりつつあるなか、公約にも掲げている立憲民主党と争点を作りたくない自民党。また、連立与党の公明党も賛成している。そしてリベラルな宏池会出身で夫婦別姓に賛成派だった岸田文雄が総理大臣になったことで、この問題は一気に進むかに見えた。

しかし、麻生という保守派の支持を受け、党内ではこれまた保守派の安倍元総理がバックについている高市早苗が総裁選で躍進したこともあって、岸田首相は「極めて慎重な姿勢」に交代を余儀なくされる。

そして、10月12日に公開された自民党の衆院選の公約は、「夫婦の氏に関する具体的な制度のあり方についてさらなる検討を進める」との一文が削除された。事実上の後退である。


◆地方より

ところが、そんな国政が揺れ動く中で、意外なことに地方で大きな動きが起こっていた。それが冒頭に挙げた「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」である。なんと2018年からこっそり地方議会で選択的夫婦別姓に賛成する趣旨の意見書を通し続けてきていたのである。その数なんと299。日本の地方自治体が1743、都道府県47ということを考えると、ものすごいことである。

しかし、ようやくこの段になってネット右翼、いわゆるネトウヨから意見書の根拠となったアンケートに疑問が呈されるようになった。

問題はQ10である。

Q10〔回答票16〕 現在は、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗らなければならないことになっていますが、「現行制度と同じように夫婦が同じ名字(姓)を名乗ることのほか、夫婦が希望する場合には、同じ名字(姓)ではなく、それぞれの婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めた方がよい。」という意見があります。このような意見について、あなたはどのように思いますか。次の中から1つだけお答えください。
 (ア) 婚姻をする以上、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきであり、現在の法律を改める必要はない
 (イ) 夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望している場合には、夫婦がそれぞれ婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない 
 (ウ) 夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望していても、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだが、婚姻によって名字(姓)を改めた人が婚姻前の名字(姓)を通称としてどこでも使えるように法律を改めることについては、かまわない

結果は(ア)29.3%、(イ)42.5%、(ウ)24.4%、分からない3.8%。

私なんかからすると(イ)が42.5%にまでなったこと自体に驚くが、例の「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」のグループはこれを「選択的夫婦別姓賛成が66.9%」として、地方議会を説得して回っていたのである。

ポルナレフ状態になるのも無理はない。きちんと(ウ)を読んでみよう。めんどくさい(姓)をのぞいてみる。

 (ウ) 夫婦が婚姻前の名字を名乗ることを希望していても、夫婦は必ず同じ名字を名乗るべきだが、婚姻によって名字を改めた人が婚姻前の名字を通称としてどこでも使えるように法律を改めることについては、かまわない

冷静に考えると、非常に分かりにくい文章である。まず最初に

夫婦が婚姻前の名字を名乗ることを希望していても、夫婦は必ず同じ名字を名乗るべきだが

とある。これは普通に考えたら、夫婦別姓反対だろう。しかし、後半は

婚姻によって名字を改めた人が婚姻前の名字を通称としてどこでも使えるように法律を改めることについては、かまわない

とある。つまり旧姓をどこでも使えるように法律を改正しても良いということである。自分でも何を言っているのかよく分からない(笑)同じことを繰り返してしまった。

ここに罠が潜んでいる。この文章中の「どこでも」が罠なのだ。どこでも?どこでもってどこよ?銀行口座は?パスポートは?…あれ、子供の苗字を決める時は?

そう、夫婦別姓派が認めろということは全部認めなければならないのだ。もちろん、それはあくまで「通称」である。しかし、全ての公文書及び子供の苗字にまで使える「通称」など、実質的には本物の姓と何が違うのだろうか。実際に、この運動の主催者はこう述べている。

しかも、二重氏名はを認めれば悪用は防ぎようがない。こうなると、「夫婦の同じ苗字」は実質使用不可能になっているのである。

これは、完全に地方議会は騙されたということである。もちろん、地域によっては自民党(やその他維新など保守系政党も含めて)少数派という地方議会もあるが、そんなところは多くはない。しかし、実際にその議会を通っているのである。

ここで分かった事は、田舎の地方議員やその取り巻きがまともに統計調査の詳細も読めないバカばかりということである(笑)たった1人、たった1人おかしいと気づけば、自民党全体で問題にして、この意見書を通さないようにできたはずなのである。それなのに、事ここに至っても賛同する意見書はどんどん製造されている。「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」の事務局長・井田奈穂氏はこの高笑いである(笑)

そりゃそうだ。政治の世界で「騙された」なんて通用するはずはない。それは自分たちの無知蒙昧さを自己告白するようなものだ。

案の定、所謂ネトウヨはご乱心である。私の様に古い人間は、「元号法」成立の際の、旧右翼の地道な地方活動を知っているから、なんでネトウヨはこんなのに気づかなかったのかと啞然としてしまう。もっと、おじいちゃんたちの言うことを聞いておけばよかったね(笑)あいつら回顧主義なクセに、年寄の言うことなんて聞きゃしないんだから(笑)


◆黒幕はいる

しかし、である。アホのネトウヨは気づいていないが、冷静に考えると腑に落ちない。なんで内閣府の調査がこんな分かりにくい設問になっているのだろうか? 内閣府の調査だからこそ、田舎の自民党のジジイ連中も信じてしまったのである。分かりにくく、隅っこの方にこそっと、致命的な一言。何かを思い出さないだろうか?

これこそ、霞が関文学の応用である。つまり、黒幕は内閣府の平成29年度 「家族の法制に関する世論調査」を実施した「内閣府大臣官房政府広報室 世論調査担当」もしくは、その近辺の人間だろう。(おそらく)彼女はこっそり「どこでも」を盛ったのである。

その内閣府の「彼女」と井田氏に繋がりがあるかどうかは分からない。本格的に内閣府の「彼女」が裏で糸を引いていることもありえるし、逆に「彼女」は爆弾を仕掛けただけで、それを冴えた井田氏が発見し、作動させただけかもしれない。いずれにしても、見事なものである。

私は以前、下のような文章を書いた。

その理屈は、霞が関に女性を送り込みまくれば、男女平等なんて一発で可能だ、というものだった。今回は間接的に霞が関に女性を送り込むことの有効性が実証されたものだと思う。たった1人冴えた人間が霞が関に潜り込んで、調査統計の1文言を弄っただけでこうなるのだ。如何に霞が関を抑えることが重要かが改めて証明されたと思う。


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