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横書き文章の読点

 昭和56年(1981)の7月、今の校舎になる前の北見市立北小学校の職員室の出来事でした。ちなみに北見市立北小学校の開校は、昭和32年で、今年開校60周年になりました。その頃の北小は1学年5〜6学級ずつあり、全校児童1200人程の学校でした。偶然ですが、自分が入学した小学校に初任者として配属になり、初めての評価事務も終盤になっていました。僕の学級の児童数は43〜44名程でしたので、音楽を除く全ての教科の成績が付け終わり、通知票(あゆみ)の所見の下書きもどうやら終わりました。清書した「あゆみ」を同じ学年を組んでいた大先輩O沼先生に見せてチェックをしていただきました。 

, (カンマ あるいは コンマ)

「横書きの時は、【 】とピリオドを書く決まりです。修正してください。」 

 読点(とうてん)の図形(書き方)について大先輩O沼先生から指導を受けたのです。もちろんワープロ等のなかった時代ですから,43〜44名程の所見は、全て手書きでの清書が終えていたのです。下書きの時に言っていただければ、【 、】を全て削り消して【 】に書き換えるという膨大な作業は避けられたのかもしれません。確か,S田先生から電動砂消しを貸していただいたとも記憶します。ともあれ,修正作業には、相当な時間が時間がかかったのだろうと思います。

習ったことはありません

 さて,横書きの【 、】と縦書きの【 】を書き分けるということを習った記憶が全くなかったのですが,このことの根拠を調べようなどとは考えずに,取りあえず大先輩O沼先生の目にする横書き文書については,【 】を使う心がけをしましたし,知識として横書きの【 、】と縦書きの【 】を書き分けることを獲得しました。
 

21世紀になって

 平成13年(2001)のことです。どのような話の流れでそうなったのかの記憶は全くありませんが,N村校長と「読点」の話になり,横書きの時はピリオド【 ,】を書く決まりだと言う知識を披露したところ,「知らない。」と,言うのです。そこで、横書き読点を【 ,】と書くという根拠が何なのかを調べてみることにしました。

図書室

 雄武町立豊丘小学校の図書室に備えられている文化庁発行の 「ことば」 シリーズという小冊子の中に答えを見つけることができました。

文化庁発行(昭和61)「ことば」シリーズ25 言葉に関する問答集12より

 これは,昭和21年3月,文部省教科書局調査課国語調査室で作成した文部省で編修又は作成する各種の教科書や文書などの国語の表記法を統一し,その基準を示すためのものです。
 この案が現在でも公用文・学校教育その他で参考にされ続けているのです。 

インターネットで調べてみると

 ・文部省刊行物表記の基準(1950) (後に「国語の書き表し方」と改題)
 ・公文作成の要領(昭和27年4月4日内閣甲第16号依命通知)
 横書きでは【 ,】を示しているのだそうです。
 
 ところが,自治庁の「左横書き文章の作成要領」(1959)では、「句読点は,『 。』(まる)及び『 、』(てん)を用いる。」と記載されているのだそうです。

様々な出版物の場合

 さて,普段目にする様々な出版物を見てみると,【 、】が大多数のようで,どうも【 ,】は、文部科学省に関係する刊行物や文章に限定された特殊な使用法のようです。
  ということで,子どもたちに勉強を教えるときに使っている「文部省検定横書き教科書」の読点は、全て【 ,】と記載されています。

文化庁HPより


2017(平成29)年6月1日 に作成配布した文章を再構成


文部科学省のルールは変わっていないようです。

ア 句点には「。」読点には「、」を用いる。横書きでは、読点に「,」を用いてもよい
句点には「。」(マル)、読点には「、」(テン)を用いることを原則とするが、横書きでは事情に応じて「,」(コンマ)を用いることもできる。ただし、両者が混在しないよう留意する。学術的・専門的に必要な場合等を除いて、句点に「.」(ピリオド)は用いない。欧文では「,」と「.」を用いる。


文化庁 文化審議会国語分科会
新しい「公用文作成の要領」に向けて(報告)
令和3年3月 12 日

 文化庁は横書きは「、」と報告書をまとめたので、各種報道等では「 , 」は使わないというような趣旨のニュースとなりました。しかし、今も教科書横書き読点のルールは、変わっていません。そう簡単に変わるわけがないのです。

 この文章を書くきっかけの一つになった雄武町立豊丘小学校の図書室はもうありません。2022年(令和4)3月31日で廃校になった豊丘小学校の閉校式典は、参列者全員の記念写真もマスクをつけたままでの撮影でした。その撮影の瞬間をノーマスクにするということの決断ができないという、とても残念な記念写真となりました。在校生のみ、その瞬間マスクを外したというのが救いでしょうか。
 という悲しい話です。

          writer Hiraide Hisashi

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