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バナナはおやつに入りますか ?

えんそく【遠足】


(1)学校の特別な活動で、見学や運動・レクリエーションなどのために、歩くことを主にして遠くへ行くこと。日帰りの集団遠出のこと。
(2)歩いて遠くへ行くこと。
  三省堂「大辞林 第二版」 

わくわく

 遠足をワクワク楽しみにしていたのは,遠く昔になってしまいました。今は遠足などの天候に影響される行事は,楽しみに待つというより,きっぱり晴れるだろうか,雨に当たらないだろうかと心配が絶えません。金曜日は,穏やかな天気であることを強く願っています。
 さて,「遠足」の始まりはどのようなものなのでしょうか。古くは江戸時代末期に「歩いて遠くに行くこと」を「遠足」と書き表したことがあったようですが,これが「えんそく」か「とおあし」なのかは定かではありません。

その始まり

 教育活動での「遠足」は,明治19年(1886)2月に東京師範学校で実施された「行軍旅行」が始まりだとされています。これには,「行軍*」という集団訓練の目的もありましたが,房総地方(千葉)を生物や鉱物の標本採集・史跡探訪などといった「学術研究」の要素を採り入れた徒歩旅行でした。この遠足は,第2回の明治20年には,8月6日〜9月4日のほぼ一ヶ月にわたって「修学旅行」と呼称して実施されました。
 *「行軍」とは,「軍隊が隊列を組んで遠距離を異動・行進すること」

明治の修学旅行

 明治20年の「修学旅行」は,当時参加した生徒(平澤氏)の日記により,日程等が明らかになっています。

日 程

 初日は早朝3時半に起床し、4時半に出立。徒歩で上野に向かい、上野6時発の汽車に乗り、11時15分に横川駅着。正午に坂本という町に到着。
翌日は4時起床で、5時に出発し10時半に沓掛着
基本的に早朝に出発し15〜20kmを行軍し、暑くなる前に目的地に着くという行程を続けた。
浅間山登山・千曲川河畔での軍事演習のデモンストレーション・葡萄酒工場の見学(甲府)・日蝕観察・富士登山
箱根にしばらく滞在し、生物の採集や近隣の探索
小田原を経て国府津から汽車に乗り、9月4日9時50分に新橋に到着。

明治二十年八月六日ヨリ九月四日ニ至ル修学旅行日誌
 
六日 午前三時三十分起床四時三十分発程六時上野ヨリ汽車ニテ出発ス通過スル所ノ宿駅停車場ハ王子六時十五分赤羽六時廿分浦和六時四十五分大宮六時五十八分上尾七時廿分桶川七時廿七分鴻ノ巣七時四十七分吹上七時五十八分熊ヶ谷八時十八分深谷八時四十五分本所九時五分新町九時二十七分高嵜九時四十分飯塚十時三分安中、磯部十時四十分松枝十時五十七分横川十一時十五分等合計拾八所ニシテ之ヨリ汽車ヲ下リ正午坂本駅ニ着シ藤橋新次郎方ニ投宿ス該所ハ群馬県碓氷郡ニ属シ寂寥タル一市街ナリ
七日 午前四時起床五時発程碓氷嶺ノ旧道ヨリ登リ八時十五分峠ノ頂キナル碓氷町ニ着シ此ニテ暫時休憩ス碓氷峠ハ近時新タニ道路ヲ開鑿シ馬車ノ往復自在ナルガ此日ハ一両日前ノ雨天ニテ新道ハ極メテ泥濘(溝)ナル由ナレハ故サラニ旧道ヲ択ビシガ聞キシヨリハ峻岨甚シカラズ之ヨリ軽井沢九時ヲ過キ靴掛十時三十分ニ着シ土屋方エ投宿ス
八日 午前三時三十分起床四時三十分発程直チ
  〜後略〜  

九州大学大学院人間環境学研究院教育学部門
http://www.edu.kyushu-u.ac.jp/html/kyokan/shinya/hirasawa.htm (リンク切れ)

 今となっては,一ヶ月近く一日に15km〜20km歩き回る行事なんて全く考えられません。せいぜい「バス遠足」や全行程交通機関を利用した「修学旅行」が精一杯です。
 そうそう,「修学旅行の始まり」と言うことになると,明治15年(1882)に栃木の中学生が東京上野公園で開催された第二回勧業博覧会見学のために教師の引率による上京がそれだという説もあります。
 ともかく,当時の文部省は,運動会と合わせて修学旅行を奨励したため,この2つの行事は全国に広まっていったとのことです。

遠足のおやつ

 多くの子どもの遠足での楽しみは,おやつに何を持っていくのかを考えたり,購入したりすることではないでしょうか。
 ところが,僕自身は遠足のおやつの購入のためにお店に行った記憶が全くないのです。記憶にあるのは,遠足当日にビニル袋に入ったおやつが学校で配られて,それを持っていったというものです。学校で配られたおやつは,給食費を使って購入されていたのでしょうか。これは謎です。
 金額が指定されていて,自分で遠足のおやつを買った経験が僕にはあったのでしょうか。さっぱり記憶にありません。 

北見市立北小学校から始まる遠足おやつ記憶

 さて,教師になって遠足のおやつを学校で配るということはありませんでした。(もっとも,修学旅行や見学学習・スキー学習の時に給食の代替食として,お菓子類を配布することが学校によってはありましたが。)最初の遠足の時の購入限度額は,150円だったか200円だったか300円か・・・これまたいくらだったのか記憶がありません。記憶に残っているのは,「ジュースは,おやつですか?」と聞かれたことです。「水筒に入っているのならおやつではありません。でも水筒には水かお茶の方がいいよね。」などと答えたのだったろうか。これまた記憶は曖昧です。

こどもが気にすること

 遠遠足のたびに「消費税は金額に入りますか?」とか「ポカリスエットは?」とかいろいろな質問を受けてきました。そこで,今は「自分が食べきれる量を買ってきていいです。」と子どもと親に任せるというやり方でいいかなと思っています。実際にそういうやり方の学校に勤務したことがあるのですが,子どもたちはバランスよくおやつを持ってきていました。同じ金額でも,子ども向けの駄菓子を売っているお店で買うと,あっと驚く量にもなりますものね。

「バナナはおやつに入りますか?」

 インターネットで「バナナは遠足のおやつか」という調査をしているのを見つけました。

 3297人が回答している調査なのですが、全体のおよそ58%の方が「きまった金額の中で買うおやつではない」と考えていることがわかりました。

@nifty:デイリーポータルZ:バナナはおやつに入りますか?

 この調査では,年齢による意識の違いも調べていて,20代では「完全におやつではない」が優勢ですが、50代ではおやつだと思っている人が1位です。なるほど,50代は,かつてバナナがごちそうだった世代ですものね。



 今からおよそ18年前の 2005(平成17)年6月8日 と 2005(平成17)年6月10日 に配布した文書を再構成しました。


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