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入社2年目社員向け 同期の絆を深める研修ツアーを磐梯町で開催 エプソン販売株式会社インタビュー

2021年11月、入社2年目の社員、総勢43名を対象に福島県・磐梯町で2泊3日の研修ツアーを実施したエプソン販売株式会社(以下、エプソン販売)。研修ツアー開催の背景には、新型コロナウイルス感染拡大により、入社直後からフルリモートでの業務を余儀なくされ、同期同士のつながり作りがままならなかった2020年入社組の課題がありました。

そこで、「同期同士の絆づくり」をテーマに開催された今回の研修ツアー。磐梯町の地元企業・プレイヤーや「LivingAnywhere Commons会津磐梯」のコミュニティマネージャーとともにゼロベースから作り上げたツアー内容は、これまでの研修とは一線を画すものだったそう。そんな完全オリジナルな研修ツアーが生まれた舞台裏や磐梯町での開催を決めた理由について人事部課長 青木晋平さんとDX推進部DXイノベーションラボ会津 チーフイノベーションアーキテクト小保方健志さんに話をうかがいました。


磐梯町で研修ツアーを開催した決め手とは?

DX推進部 小保方健志さん(写真左)人事部 青木晋平さん(写真右)

そもそもエプソン販売の親会社である「セイコーエプソン株式会社」は、会津若松市が進めるスマートシティ構想「スマートシティ会津若松」に参画する企業の1社。2020年7月からはオープンイノベーションの拠点として会津若松市にあるICTオフィス「スマートシティAiCT(アイクト)」に拠点を開設し、エプソングループ全体として社会課題に向けたサービスの社会実装を進めています。

今回の研修ツアー開催地をめぐっても、現地でICTを活用した地域課題に取り組む小保方さんが橋渡し役となり、磐梯町での開催が動き始めます。

小保方さん:私自身は、2020年10月より「スマートシティAiCT(アイクト)」に在籍し、主に会津地域におけるICTを活用した教育環境の整備に取り組んでいます。日頃さまざまな自治体の方とお付き合いがあるなかで、磐梯町とも地域課題にかかわるさまざまな活動をご一緒させていただいています。そんなお付き合いを通して、磐梯町の行政職員の方から磐梯町を舞台にワーケーションやリモートワークを推進する施策について相談をいただきました。エプソンとして何かできないだろうかと考えていたときに、人事部の青木に声をかけたことが今回のツアー開催のきっかけです。

一方、青木さん側は、エプソン販売の経営層より直々に入社2年目社員の絆づくりをミッションとして与えられていました。しかし経営層が言う絆づくりとは、2年目社員みんなで「島へ行く」イメージだったと言います。自然あふれる島で人と人とのつながりを深める——これこそが今回の研修ツアーの核となりうるポイントだったと青木さんは話します。

青木さん:小保方から声をかけられ、逆に「島に行くようなイメージ」で何かできないかと相談してみました。すると小保方から会津地域の地域活性に取り組む方々を紹介され、さまざまなアイデアをもらいました。なかでも「ロゲイニング」と呼ばれる野外スポーツはフィールドワークとして非常に興味深いものがありました。ロゲイニングとは、エリア内に設置されたチェックポイントを回り、得点を集めるスポーツの一種です。広大な自然環境のなかで協力しながら課題をクリアしていく内容は、チームワーク・持久力・戦略が問われます。これこそが「島に行くイメージ」に近いと感じました。さらに磐梯町はロゲイニングを行うのに適した自然環境やロゲイニングに関する知見もあることから、この場所ならイメージ通りの研修ができると確信に近いものを感じましたね。

そのほかにも、磐梯町での開催を決めた特別な理由があったと話す青木さん。これまで人事部としてさまざまな研修の企画開催に携わってきた立場として、磐梯町での開催にはあらたな価値を感じたそう。

青木さん:通常、企業として研修や合宿を実施する場合、施設そのもの——いわゆる「箱」としての価値に着目する傾向にあると思います。例えば、
ロケーションのよさや施設環境が整っているという施設面の条件です。ただ今回の研修に関しては、「箱」の価値よりも、箱の「中身」——つまりコンテンツの質に価値を置きました。では、「価値あるコンテンツとは何か?」と言うと、会社という日常業務の枠組みにとどまらず、社会や地域と繋がって提供できるコンテンツだと考えました。そういった観点から言えば、磐梯町をはじめとする会津地域は、官民学の連携が機能し、多様な人たちが自然とつながり、シナジーを生み出せる土地。今回のような新たな取り組みをカタチにする場所として、まさに最適だと感じました。加えて、研修ツアーそのものを地域の方々とゼロから作り上げられたことは、最終的な決め手としては非常に大きかったですね。何度も打ち合わせを重ね、企画を作り上げていくプロセスそのものにも価値を感じました。


従来とは一線を画す研修内容 新たな取り組みによる予想外の収穫

「同期のつながり強化」「心身のリフレッシュ」を目的に企画された今回の研修ツアー。主なアクティビティとして対話会、ヨガ、ロゲイニングを開催。これまでとはまったく異なる手法で研修の中身を作り上げたことで、想定外の結果が得られたと言います。

青木さん:今回の研修でとことんこだわったのは、スキルを中心としたマイナス面をあえて見ないという点です。2年目は「教えてもらう」から「自分でやってみる」に変わるタイミングのため、スキルが課題となることが多く、これまでの研修中では「何ができていないのか」を見るようにしていました。ただし今回は、アフターコロナの時代に求められる新たな研修の価値を提供したかったので、「well-being(ウェルビーイング)な状態をつくれているか?」「集団としての価値を体現できているか?」に的を絞るようにしました。

なかでも、研修の目玉として企画していたロゲイニングは、参加者内で最も反響が大きかったアクティビティだったと言います。メンバーは当日くじ引きで決定し、3〜4名編成のチームに分かれて実施。ポイント地点とポイントごとの得点が記された地図を手に、高得点を目指して制限時間内にチェックポイントをめぐります。エリア内に設置されたチェックポイントはすべて回りきれないため、どこを狙うか、動線や順番をどうするかなど、戦略とチームワークが重要になります。今回は研修向けにアレンジし、別の場所で待機する人事部社員と遠隔でつなぎ、ロゲイニングに取り組む2年目社員たちの姿をモニタリングしていたそう。そんな彼らの姿を見て、青木さん、小保方さんはどのように感じていたのでしょうか?

青木さん:率直に「場」や「機会」を用意すれば、人はイキイキのびのびできるものなんだなと人が持つ可能性についてあらためて考えさせられましたね。なおかつ、これまで見たことない最高の笑顔を見られたことは大きな収穫でした。ロゲイニングではチェックポイントでチームの集合写真を撮影するルールを設けたのですが、写真に写る社員たちの表情を見たとき、正直びっくりしました。こんな表情、見たことないと。日常業務に追われる日々で失いかけていた姿・表情だったと思います。

小保方さん:自然環境のなかで仲間とともに課題をクリアしていくプロセスは、お互いを刺激し合えるような良い経験だったと思います。私のチームにも実は2年目社員が3名いて、研修後、彼らから「とてもリフレッシュできた」という報告をもらえて、非常にうれしかったですね。私から見ても彼らは一段と頼もしくなっていて、今回の研修は貴重な機会だったとあらためて感じています。

今回の研修ツアーを通して、これまで見たことのない新たな表情や可能性を垣間見ることができたと話す、青木さんと小保方さん。

参加者の事後アンケートでも「同期が仲間と言える存在になった」「個人というより、2020年度入社の集団としての感覚がかなり変わったように感じた」と、同期同士の絆をあらためて意識する声が寄せられたと言います。


組織・業界の垣根を超えた化学反応が起こる町——企業目線で見る磐梯町はじめとする会津地域の魅力とは?

大成功のもと終了した磐梯町での研修ツアー。あらためて企業目線から見た磐梯町の魅力をうかがいました。

青木さん:若干語弊があるかもしれませんが、例えば全国的に知名度を誇るワーケーション施設や地域と比べると、磐梯町は一見、ピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。しかし実際訪れてみると、良い意味で期待を裏切られます。今回の研修で言えば、単純に研修の「場所」だけを移すというのではなく、地域とのつながりを通して新しいコンテンツを生み出し、研修に取り入れることができました。磐梯町には地域の人々がオープンなカタチでつながり、意見を交わす「場」があり、新たな気づきを得られる機会が非常に多く存在します。さらに普段つながらないような人々がオープンにつながり合えることで、お互いの良さや可能性を引き出してくれます。何かを教えるとかインプットするというよりも、本来持っている可能性が引き出されるのが磐梯町であり、企業にとっても社員の良さ、組織の良さが引き出される町だと思います。

一方、現地で地元企業や行政、外部のプレイヤーを交えて、地域の課題解決に取り組む小保方さんの目に、磐梯町はどのように映っているのでしょうか?

小保方さん:私が在籍している会津若松市の「スマートシティAiCT」では、組織や業界の枠を超えたコラボレーションを通して、日々あらたな化学反応が起こっています。「あの企業とこんなことをやってみたいね」というアイデアが具現化できるまさに稀有な土地です。加えて会津地域の方々は、想像していたよりもアグレッシブに動く方が非常に多いです。訪れる前は、もう少し閉鎖的な土地かなと思っていたのですが、実際は磐梯町はじめ会津地域は、産官学連携の先進的なまちづくりやDX(デジタルトランスフォーメーション)化の推進など、新しい施策をどんどん展開しています。さらにスーパーシティの取り組みに向けて集まった企業もお互いに刺激し合い、イノベーションが生まれる非常にエキサイティングな環境です。まさに組織や業界、地域の枠組みを超えて、企業が集まり、面白いことに挑戦できる町だと思います。


共創ネットワークで課題解決を目指す——今後、会津地域で取り組んでみたいこと

磐梯町での研修ツアーを通して、人の可能性そして企業の未来についてあらためて考えさせられたと話す青木さんと小保方さん。この経験を踏まえて、今後磐梯町はじめ会津地域で展開していきたい事業や構想について伺いました。

青木さん:コロナ禍以降、在宅勤務やオンラインコミュニケーションが当たり前となった今、あらためてリアルに出社して働くことやリアルの研修を受講することの価値が問われる時代となりました。生産性や効率化を考えたら、在宅勤務やオンラインミーティングで十分です。じゃあ、あらためて「リアルの価値とは何か?」を考えたとき、人々との交流によって得られる気づきや効果から生まれるものであると考えます。特にこの会津地域は多様な企業や人が集まり、オープンイノベーションによる社会課題に向き合える場所。そのため今後、会津地域をハブに、さまざまな企業とつながり、新しいコラボレーションを実現していきたいですね。

小保方さん:バリューチェーンにおける「販売」「サービス」を担う我々にとって、顧客と接点を持つことは非常に重要です。とはいえ、同時に一番難しい課題でもあります。顧客との接点を持つためには、「場」を設けることが必要です。そこで会津地域を舞台に研修などの開催を通して顧客の困りごとに触れ、さらに課題解決に向けたコンテンツを官民連携で提供できたらと考えています。


同期との横のつながりが強化できたうえ、心身のリフレッシュにもつながった今回の研修ツアー。テレワークが続き、孤独を深めやすい環境のなかで、研修ツアーを通して「大変なのは自分だけじゃない」と勇気づけられたメンバーも多かったと言います。

心身と社会的な健康を意味する「well-being」の観点からも、磐梯町での滞在は個人としての感情や行動にフォーカスされ、自らを見つめ直す貴重な時間となったようです。

大自然に囲まれ、リラックスできる環境であるとともに、多様な人々が集まり刺激しあえる、よい意味での緊張と緩和が存在する会津地域。研修や合宿、サテライトオフィスの導入地としてぜひ活用してみませんか?


プロフィール

青木晋平(あおき・しんぺい)
東京都出身。1996年エプソン販売に入社。営業、マーケティング、営業企画を担当したのち、2017年より現職。2021年より人材育成と組織カルチャー変革のマネジメントを担当。

小保方健志(おぼかた・けんじ)
埼玉県出身。2002年エプソン販売入社。プロジェクターの国内マーケティング、セイコーエプソン経営企画部門などに従事したのち、2020年よりスーパーシティ構想参画企業として拠点が新設された会津若松に着任。産官学連携によるデジタルを用いた地域課題の解決に取り組んでいる。


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