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テッサリーニ: ヴァイオリンまたはフルート・トラヴェルソとチェンバロのための ソナタ1番 変ロ長調


【作曲者について】

カルロ・テッサリーニ(1690-1766)はイタリア生まれのヴァイオリニスト・作曲家です。その作風から、若い頃コレッリやヴィヴァルディに師事したという説がありますが、確証はありません。

テッサリーニはヘンデル同様「旅行型」の作曲家です。
イタリア各地で教会の楽長や宮廷楽長などの要職を務めたのち、57歳頃からヴァイオリンのヴィルトゥオーソとして、フランス、ベルギー、オランダ、ドイツ、イギリスなど、ヨーロッパ各地で演奏活動を行いました。
70歳を超えても精力的に練習し、演奏技術が衰えることはなかったそうです。

また、兄と出版業を起ち上げて、作品の出版にも積極的に携わり、40余りの作品集が出版されましたが、アムステルダムやパリの有力な出版社と提携したため、中にはテッサリーニの承認なしに無断で出版されたものも含まれています。

1760年ころオランダに定住したテッサリーニは、1766年アムステルダムで76歳の生涯を終えました。

【作品について】

この作品は、1748年にヴェネツィアで出版された作品14「ヴァイオリンまたはフルートのための6つのソナタ(VI SONATA à VIOLINO O FLAUTO TORAVERSIERE E CEMBALO)」の第1番変ロ長調です。

作品14は、室内ソナタと教会ソナタが混在していること、短調のソナタが1曲しかないこと、ト長調の曲が2曲存在することなどから、テッサリーニ自身が過去のヴァイオリン作品からフルートの演奏にも適した6曲を選び、部分的に書き換えて出版したものと思われます。
ダブルストップを要求している箇所が見られることから、実態は「フルートでも演奏できる」ヴァイオリンソナタ集です。

作品14はオーストリア継承戦争の講和条約(アーヘンの和約)のために召集された全権公使に献呈された作品で、表紙に「エクス・ラ・シャペル会議全権大使閣下へ(alle LORO ECCELLENZE GE’MINISTRI PLENIPOTEN-ZIARI NEL CONGRESSO DI AIX LA CHAPELLE)」と、記されています。

出版社の記載がありませんので、テッサリーニ自身が出版したものでしょう。

テッサリーニのフルートのための作品は、これ以外に1732年にアムステルダムで出版された作品2「フルートと通奏低音のための12のソナタ( XII Sonate per Flauto Traverso e Basso Continuo)」が現存しますが、この作品2は、1729年にヴェネツィアで出版された作品1「ヴァイオリンと通奏低音のための12のソナタ(XII Sonate à Violino e Basso Continuo)」を、アムステルダムの出版社ル・セーヌ社が、テッサリーニの承認なしに無断でフルート用に書き換えて出版したものです。
テッサリーニの正式な作品2は、1734年にウルビーノで出版された「師弟のための2つのヴァイオリンによる6つの室内ディヴェルトメント(Il Maestro e Discepolo, 6 Divertimenti da Camera a due violini )」です。

ル・セーヌ社は、エティエンヌ・ロジェ (1664-1722)が創業した楽譜出版社ロジェ社の出版事業を、ミステリアスな紆余曲折の後、創業者の長女フランソワーズの夫ミシェル=シャルル・ル・セーヌが継承した出版社です。
ル・セーヌ社は、テッサリーニの他にもフランチェスコ・ジェミニアーニやピエトロ・カストルッチなどのロジェ社時代の多くの出版譜を作曲者の承認なしに編纂して、出版しています。

本書の作品14の第1番B-durは、急-緩-急の室内ソナタ形式のソナタです。
第1楽章は躍動感のあるSpiritoso、第2楽章はg-moll(平行調)のシチリアーナ、第3楽章はB-durのジーグです。

第1楽章

第2楽章

第3楽章

本書の内声(チェンバロの右手)は、1748年の出版譜の通奏低音に付けられた数字を基にリアリゼーションしたものです。
出版譜に大きなミスはありませんが、通奏低音の数字や臨時記号の記載漏れや誤りがいくつかありました。
通奏低音の数字については修正してリアリゼーションに反映しています。
その結果、作曲者の意図ではない和声の動きがあるかもしれません。
チェンバロのパート譜には出版譜のまま数字を記載していますので、不自然と感じる部分があれば、内声を変更・追加して演奏してください。
記載漏れの臨時記号については、括弧付きで記入しています。

【楽譜の概要】

🎵 製本版

ススコア/ A4版11ページ 
パート譜/ ヴァイオリン(フルート、オーボエ)、ソプラノリコーダー、アルトリコーダー、チェロ
定価:1,400円 本体価格:1,273円
下記のショップで販売しています。

🎵 ダウンロード版(PDF)

有料エリアからダウンロードできます。
※本編+パート譜(表紙は付いていません)

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14字 / 1ファイル

¥ 900

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