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40,任期の延長

ボランティアの任期は2年だった。しかし、文通や日本の学生との交流も経験したせいか、生徒たちの日本語に対する意欲は高まるばかりだった。それに高校1年から、持ち上がりでずっと教えてきたのですっかり愛着が湧いてきた。どうせ日本に帰っても何もすることが決まってなかったし、なんとか彼らが卒業するまで見届けたいと思って、任期を1年延長することにした。

しかし、生徒たちは高校3年生。中国の受験戦争は日本よりも厳しく、この時期日本語を教えるということは、日本の高校3年生の生徒に教養科目として中国語を教えるようなもので、生徒たちの負担は相当大きい。だから彼らの意志を尊重して、今まで教えてきた2クラスのうち、続けて勉強したい生徒だけを集めて1クラスにして、週5時間の授業を行った。

大変なスケジュールの中、50人の生徒が日本語を続けると言ってきた。受験勉強がきつくなったらいつでもやめていいからということで始めたこのクラスだったが、やはり1人抜け2人抜け最後まで残ったのは30人ぐらいだった。

ある生徒は僕の部屋にやってきて「先生、ボクは日本語の勉強は好きだけど今は勉強をする余裕がありません。来年何とか内蒙古大学に入って将来は体育の先生になりたいんです。でも大学に入ったらまた日本語を勉強したいのでそのときは日本にいる先生と文通がしたいです。」こう言いに来る生徒もいてうれしかった。

教室にだんだん空いた席が多くなっていくのを見るのはつらいもの。しかしそれに反比例して生徒たちの意気込みは上がっていった。空いた席を補うように大声で授業に参加している。このような状況でお互い教え学び合っていると、なんだか新たな信頼関係が芽生えてきたような気がした。こうしてボクの活動は「広く浅く」から「狭く深く」へと移っていった。

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