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34,隣のくまさん(その2)

クマさんは人付き合いがいい。友だちがたくさん彼の部屋を訪れる。夜だとたいていその後、外に出かけるか、その場で酒盛りが始まる。ボクも時々誘われた。楽しめることもあったが、酒はたくさん飲まされるし、それ以外のときはモンゴル語でしゃべり合うのでボクは蚊帳の外。つまらなくなり先に引き上げるというパターンが多かった。

時々、彼らの酒盛りは深夜まで続く。隣で寝ていると、大声で騒ぎ歌い、まさにドンチャン騒ぎ、当然寝られない。寝られないだけじゃなく徐々に自分が惨めになってくる。隣がにぎやかになればなるほど、一人さびしく異国の地で眠りに着くボク自身が情けなく思えて、いたたまれなくなるのだった。校舎に住んでいたときのあの静けさが懐かしくもあった。

明け方まで酒盛りが続いた日、ボクは思い切って彼に言った。「昨日はぜんぜん眠れなかった。それだけじゃない。ボクはとてもさびしくなった。外国で1人で暮らしてみるとわかると思うが、となりでドンチャン騒ぎ、こちらは一人ぼっち。こんな状態が一晩続くと、とてもやりきれなくなる。」彼は「それなら僕の部屋で一緒に飲もう。さびしくなくなるから」「そんな問題じゃない。とにかく12時以降は部屋で飲まないでくれ。飲むんだったら外で何時まででもやってくれ。ただし石炭は汲んでからね。」彼は快く承諾してくれた。それからしばらく彼の部屋での酒盛りは少なくなった。あっても12時までには収束していた。

しかしある晩、12時を過ぎても酒盛りが続いていた。クマさんは必死に友人たちを帰そうとしているようだが、客のほうはもう酔いが回って、帰ろうとしない。一応、クマさんも努力したみたいだし、仕方ない。と思おうとしたがやはり眠れない。だんだん空しくなる。2時を回って、クマさんももう開き直って大声で歌っている。こちらは居ても立ってもいられず、思わず外に飛び出した。隣にわかるように外門を思いっきり蹴った。

とりあえずグランドまで行ったが、真冬の真夜中。寒さがずっしり凍みる。誰もいないグラウンドを息が切れるまで走った。そしてグラウンドの真ん中で、仰向けに大の字になって倒れた。星がとてもきれい。流れ星も見えた。壮大なプラネタリウムを独占しているようで爽快だった。が、すぐに寒さがボクを現実に引きずり戻した。「なんで、もっと大らかになれないんだろう。酒が唯一の娯楽ともいえるクマさんもボクの隣に住むことになったばかりに酒を飲むのも気を使わなければならないのだ。たまに眠れなくてもいいじゃない。むしろ、あんな中でも眠れるぐらいにならなきゃ。」必死にそう考えてみたが、目からは涙がこぼれていた。どこにも行き場はなかった。とぼとぼと部屋に戻った。

翌朝、10時ごろ起きた。幸いその日の授業は昼からだ。コーヒーでゆっくり目を覚まし、外の公衆トイレでしゃがんでいたら、クマさんがやってきて隣に座った。「昨日は本当に済まなかった。12時になって友だちを帰そうとしたが、聞かないんだ。きのう外に行っただろう。音がして心配したけど戻ってきてほっとしたよ。これからは絶対夜遅くまで部屋で飲まないことにするよ」「ボクも隣で騒いでいるくらいで外にとび出したりして子供みたいだった。でもあの時は本当にああするしかないくらい寂しかった。これから修行しなきゃね。」

その後も、隣のクマさんとはいろいろ衝突があった。そしてよく一緒に酒も飲んだ。隣の人とうまくやっていくのは難しい。でも今ではこんなに心の狭いボクの隣に住んでくれたクマさんに感謝している。

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