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29,夏の旅行その2

その後、エレンホトから長距離バスで丸1日かけて、草原の町シリンホトへ。大草原を堪能した後、一度内モンゴルの省都フフホトに戻り、北京経由で内蒙古の北東部、大興安嶺山脈の麓で細々と暮らしている狩猟民族オロチョン族の里に行った。

2泊3日の列車の旅。内モンゴルの西から東へ列車で行くには北京、遼寧省、吉林省、黒竜江省を経由しなければならなかった。それほど内モンゴルは長くでかい。黒竜江省のチチハルからは指定席が買えず、ずっと立ちっぱなし。ぎゅうぎゅう詰め。その後、やや空いてきたが、五時間立ちっぱなし。しかもオロチョンの里に着いたのは朝の三時ごろ。ロシアに近いところ。夏なのにムチャクチャ寒い。しかも駅舎がないのでここで休むこともできない。しばらく歩いて、宿が見つかったので中に入った。カウンターには誰もいない。声をかけても誰も出ない。仕方ないから勝手にロビーのソファーで一寝入り。朝、従業員に起こされた。やっとチェックインできると思ったら外国人は泊まれないという。もっと先にあるオロチョン賓館に行け、と言われた。とぼとぼ歩いていくと町の規模にしては立派なホテル。受付で外国人居留証を出すと、「日本人ですか。お待ちしていました。」と丁寧にお辞儀され、最上階のスイートルームに通された。こんな部屋は金がないから泊まれない。と言ったら、「ここは招待客の部屋だからお金はいりません。」と言われてびっくり。オロチョン族ってよっぽど日本人が好きなのかなあ、それとも何か裏があるのか・・・。とにかくものすごい睡魔に襲われてふかふかのベッドで睡眠。

昼過ぎに起きて、ホテルを出て昼食をとってそのまま町を歩いた。夕方帰ってくるとロビーに日本人らしい人が二人。ちょっと年配で明らかに日本人だとわかる。話しかけたら、やっぱり。大学の教授でオロチョン族とかその祖先の女真族を研究しているという。僕の泊まっていた部屋は本来その人たちのために用意されていたもの。僕が朝早く着いたから、フロントが間違えて僕をスイートルームに入れたのだ。その人たちはツインの部屋に押し込められてしまってた。でも僕のオルドスでの生活を話すと「せっかくだからそのままスイートに泊まったら?」と言われ大感激。その人たちはオロチョン族自治県政府の正式な招待を受けていた。夜の政府主催の歓迎会になぜか僕も参加。年に一回しか食べられないような貴重なカモシカ?の鼻とか許可がないと食べられない貴重な鳥の肉とかいろいろ珍しいものをいただいた。次の日はその人たちのフィールドワークについていった。まず女真族が住んでいたという洞窟へ。鍵がかかっている中に入って、遺跡を見学。その他、鳥葬の現場や狩りの現場など、本当に貴重なものを見せてもらってまた大感激。偶然のめぐり逢い。本当に貴重な体験をさせてもらった。

その後、また列車で南下してハイラール、少し西へ行って、ロシアとの国境の町、「満州里」まで足を伸ばした・・・。今度はなぜか内モンゴル科学技術委員会の研修会に合流。大草原、湖、国境の緊張感、羊尽くしの会食など、こちらも個人旅行では味わえない貴重な体験だった。

それにしても・・・。ある時は満員列車並みに込み合った車内で体がねじれたまま何時間も身動き取れずに、ひたすら耐えていた。また、ある時は小さな村で夜を迎え、適当な宿が見つからず、仕方なく中国人に成りすまし、1泊3元の土間のたこ部屋で荒くれどもと夜を明かした。切符を買おうと駅で並んでも、横からどんどん人が割り込んできていつまで経っても買えないこともあった・・・。

中国での旅行は楽じゃない。どこかに行こうと思うとそこの景色より、移動の辛さが真っ先に頭をよぎる。それでも重い腰を上げてしまうだけの不思議な魅力が中国の旅にはある。その後の長期休暇では雲南・四川・チベット・ウイグルなど奥地を中心に中国を駆け巡った。

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