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726日目 My Shadow

2023年 10月 30日 (月)

●My Shadow、聴きました。

びっくりした。
ここで失恋ソングをぶつけてくるのかという驚きだ。曲を聴いてすぐに、思わずスクールアイドルの日常のラブソング編を読み返しに行ってしまった。
自分の恋愛観が掴めず、人に好意を抱くことに自信を持てていないところから発生した曲がこれなら、朝香果林という人物は、自分が思っている以上に自己肯定感が低いのかもしれない。
自分を曝け出すのも大事とエマさんから言われ、曝け出す自分の内面について考えたら、たちまち普段のクールな様子が崩れてしまうほど弱気になる感じは見ていてとても新鮮だったが、そこから出た答えが自分の中にある好意に気づいた時にはもう手遅れ、だなんてあまりに悲しすぎる。
恋愛に関して弱気になってしまう内面が曝け出せているという意味ではエマさんの言葉には従えているのかもしれないが、いざ内面を曝け出してみたら、相手のことを想えば想うほど私は私の好意を心の中に押し込めてしまう、になってしまうのがなんとも皮肉的だ。

自分の気持ちに自信が持てず隠してしまうのが本当の自分の気持ちなら、それを曝け出すにはどうすればいいのか。プログラムだったらエラーを起こしそうな複雑な命題だが、果林さんはとにかく悲観的な姿を見せることを選んだ。
言われてみれば、果林さんはモデルである自分に自信を持っているように見えて、その実本当の自分、自然体な自分への信頼度はかなり低いように見える。容姿を褒められた経験は数知れないだろうし、実際その容姿を活かしてモデルという仕事をやっていることから、人に見せるために努力した自分への信頼は高いだろう。
食生活を気遣うほどに重ねた努力とこれまでの人生で周りの人からかけられた言葉がその信頼に繋がっているのでとても納得のいく自信なのだが、では一方で、素の自分に対してはどうだろうか。
生活が苦手で、方向音痴で、クールな自分のパブリックイメージに似合わず可愛いものを好んでいる。
我々、および同好会メンバーのみなさんからは魅力的に見えているそんな決して完璧だけではない姿を、彼女自身はあまりよく思っていない様子は度々目にしてきた。
素の自分には、モデルとして人に見せていない自分の姿には自信が持てていない彼女が作ったラブソングが、本当は魅力的でない私なんてあの人からは選ばれない、というところすら超えて、私では自分の本当の気持ちにすら気づくことができない、になってしまうのがまあ辛い。
あなたの取り繕っていない姿を好む人はたくさんいるんですよと言いたい。まあそれに似た言葉はエマさんがよくかけている気がするのだが、そのおかげで果林さん自身もうっすらと、そのことに気づき始めている気がする。
しかしそこに甘える果林さんではないからこそ、今回こんな失恋ソングを作るに至ったのだろう。
あとなんとなく、同好会の12人全員がラブソングを作るにあたって、他のメンバーとの被りを避け、かつ他の同好会メンバーには作れなさそうなラブソングを考えた時に、これはお姉さんの担当かしら、とかなんとか言って失恋ソングを作り出したのかな、なんてことも考えていた。彼方さんエマさんが失恋ソングを作るイメージはあまり想像がつかないし、下級生たち(テイラー含む)もまた然りだろう。この役を買って出られるのは私だけ、というところを出発点に自分の内面とも向き合って出来上がったのがMy Shadowなのかな、と。妄想は大いに広がった。


この曲においてShadowは何を指しているのだろうか。
2度と交わらない影を重ねて、悲しいShadow、二人のShadow、そして曲名のMy Shadow。さあ影とはなんなのか。

個人的に思ったのは、素の自分、だった。そう考えると曲名に私の素の自分とつけているあたりからもうニヤニヤが止まらない。エマさんのアドバイスを受けて、素の自分をさらけ出そうと頑張ってできた曲のタイトルとしてはかなり直球だ。
また、果林さんが恋愛を素の自分を見せ合うことと解釈したのなら、2度と交わらない影、という言い方は大分悲しいものに思える。本当に自分の思いが成就することに対しての諦めが強いんだなとひしひしと伝わってくるのが辛い。
そういえば、果林さんが所属しているユニットにもShadowと名のつく曲があった。Shadow Effectだ。影が素の自分を指しているのであればこちらの曲にも非常に納得がいくのだ。
光と影は表裏一体で支え合っている、どちらもが互いに欠かせないといったニュアンスのことが度々繰り返されるのがこの曲だが、影が素の自分を指すなら光はやはりみんなに見せている朝香果林のパブリックイメージのことを指すのだろう。
普段の素の自分があるからこそモデルとしてみんなから憧れられる朝香果林があるのだと、少しでも彼女が素の自分を肯定できているのなら嬉しい。

とにかく、悲観的で弱気な歌詞が続く割にはどこか力強さを感じさせる果林さんは流石だ。失恋ソングとは思えないほどのかっこよさは果林さんの強力な個性だと思う。
久保田さんの歌声もやはり良いものであり、彼女自身が一視聴者としてもこのリリックビデオを楽しんでいる様子を見せてくれるのもとてもありがたい。
良いリリックビデオでした。


あと本当に個人的に、想い人に愛さんを当てはめてみたら思いのほか素晴らしかったので一応言っておこうと思う。一応ね。

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