誰そ彼

夕暮れが嫌い。

ああ、すまない、薄暗いのは苦手だっけ、
と、カーテンを開けようとする夫を制し、

明るさじゃあないの。
黄昏。

夕方は頭痛くなるよね、
と、息子が言う。

太陽ではない。
生と死のあわいだから?
理由などわからない。
ただそこにある
見えないものの影。

だから私は夜を迎えに行く。
早く、早く、
夜の底へ、
闇の中へ、

人工灯をともせ。

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