病院の入り口で
気が付くと私は、病院の入り口に立っていた。
立っていたのは、傘立ての中だ。
なぜ?
よく見ると、他にも、傘立てに立っている人がいる。
傘立てだけじゃない。
観葉植物の鉢の上。金魚の水槽の上。たたんだ車椅子の上にいる人もいる。
中年のおばさんもいれば、若い人もいる。
それらが、病院の中に向かって、じーっと立っている。
と。
たたんだ車椅子の上にいた青年が、くるっと振り向くと、車椅子を降りて病院から出て行った。
私も、つられて外に行こうとしたら。
急いで病院の中に入ってくる人がいた。
私の夫だ。
あなた、あなた。
呼んでも聞こえないようだ。
追いかけていこうとして…
次に気づいたのは病院のベッドの上だった。
ああ、そうだ、私は事故にあったんだっけ。
私を覗き込む夫の顔が安堵したようだった。
もう大丈夫。大丈夫だから。
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