回送
坂本さんはタクシー運転手だ。
ある日、お客を乗せた帰りに、たまたま有名な霊園の前を通る道に出てしまった。
いつもはなるべく通らないようにしているが、その日はそのまま突っ切ることにした。
霊園の前を通り過ぎた途端
「もどってください。」
と、後部座席から運転席へ、女がぬっ、と顔を出した。
長い髪が顔に張り付いていて、目だけが大きくぎろぎろとしている。
わっ、と思って坂本さんは急ブレーキを踏んだ。あわてて後部座席を見たが、誰もいない。
それ以来、坂本さんは絶対その道を通らないようにしている。
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