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忘却という名の死

ごめんなさい、覚えていないや
と、その人は言った

あんな大きな事故なのに
私はまだそこにいるのに
ああ
私は死んだんだ
少なくとも、その人の中で

自然に忘れてしまったのか
忘れないと進めなかったのか

時の流れに私は立ち尽くし
他のみんなは流れて去った
誰も私を覚えていない

十五年前!

たった十五年前なのに
私は過去に生きている

あの夏は、
甲子園地方大会を
私は泣きながら見ていた
そんなことも誰も知らない

誰か私を覚えているか

平成の夏は終わらない
私はそこから動けない

あの夏の、七月十日。

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