『スカートをはくひと』
「次男だからっておさがりばかりじゃかわいそう」と、おばあちゃんが言ったので、ぼくはママとおばあちゃんと、お洋服を買いに行った。
「なんでも好きなの選んでいいからね。」と言われて嬉しかった。
デパートで、ぼくは「これ!」と言ったら、ママは「これは女の子のなのよ」と言った。赤いお花のシャツだ。何で?と思ったけど、「じゃぁ、これ!」と、別のにした。おばあちゃんが「また、女の子のだわ。えいちゃん、そでがちがうのよ。別のにしなさい」と言った。金魚のシャツ、かわいいのに。何でも好きなの買っていいって言ったのに。
ぼく、鼻の頭が熱くなって、目がぷくっとしてきた。
そしたら、ママが「えいじ、コレは?緑のカメさんよ」と言って見せてくれた。ミドリガメ!うん、これにする。
次は、ズボンだ。「これ!」
ママも、おばあちゃんも困っている。
「…えいちゃん、これは、キュロットスカートって、女の子のなんだよ…」
うそだ、ズボンだよ?青くて、おまたが赤のたてよこじまの、かっこいいズボンだよ。
「前に、おしっこするチャック、ないでしょ?女の子のだよ」
ずるい!ずるいずるいずるい!なんでも好きなのって言ったのに。ぼくが選んでいいって言ったのに。お兄ちゃんはいつも新しいお洋服なのに…。
目がじわっとしてきた。
うわーん。わーん。わーん。
ズボンはとうとう買えなかった。
夜、ちょっと目が覚めたら、パパとママとおばあちゃんが話している。
「えいちゃんは、女装するようになるんじゃないの?」と、おばあちゃん。
「どんなの選んだんだ?」と、パパ。
ママが、
「赤い大きなハイビスカスのシャツと、和風柄の金魚のシャツと、青のデニム地で別布の赤のタータンチェックが動くと見えるようなキュロット。センスがいいのよ、あの子。それに、毎日花に水をやってるじゃない?花が好きなのよね…。」
うん、あのお花はかっこよかった。なんで女の子のなんだろう?
(大人になったら)とろとろしながら、ぼくは考えた。(自分で、好きなお洋服を買うぞ…)。
※この作品はAmazon kindle(電子書籍)『あやしうこそブログるほしけれ』に収録されています。
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