静寂という偽善の中に

夜は沈黙しない

風に揺れる雨戸の
隣家の風見鶏の
松林の葉擦れの
音を一枚ずつ剥いだ
レタスの芯のような
さらに奥の空洞のような
耳鳴りと区別がつかない音
ささやき
呟き
判然としない音で

死んでもいいことはなかった

この闇の中で私の母は
いつ息が止まってもおかしくない
脈々とした血のつながりが

夜の
夢の
意識の下で
聞こえぬ音で
鳴り続ける

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