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詩だけを抜き出したマガジン

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創作を雑多に入れていたマガジンから「詩」を抜き出して読みやすいようにします。
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2017年5月の記事一覧

父よ

あなたが退院したら 家には戻れない 妻も娘も あなたを支えられない わかっていたこと それな…

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母よ

かあさんは いつも 天気の心配ばかりしている 暑くなるから脱ぎなさい 寒くなるから着なさい …

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誰そ彼

夕暮れが嫌い。 ああ、すまない、薄暗いのは苦手だっけ、 と、カーテンを開けようとする夫を…

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風は歌わない

歌うのは樹。 歌うのは電柱。 歌うのは家。 家々の間を、 大きなものの口が、 楽器のように…

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人間嫌い

世界が嫌いで 足の裏をむしり続ける 人魚姫の足に 陸の上は痛いのだ ああ、世界が金魚鉢だっ…

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この杭はひき抜きにくい

息子よ 母に似て他人(ひと)に傷つく息子よ 心の皮膚をむき出しにするな 風から身を守るコー…

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静寂という偽善の中に

夜は沈黙しない 風に揺れる雨戸の 隣家の風見鶏の 松林の葉擦れの 音を一枚ずつ剥いだ レタスの芯のような さらに奥の空洞のような 耳鳴りと区別がつかない音 ささやき 呟き 判然としない音で 死んでもいいことはなかった この闇の中で私の母は いつ息が止まってもおかしくない 脈々とした血のつながりが 夜の 夢の 意識の下で 聞こえぬ音で 鳴り続ける

鳥よ雲よ

ルービックキューブが大流行したとき、 町のおもちゃやではパチもんを売った やがて、おもちゃ…

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おはいりなさいの輪の中には

かつて 保健室と図書室は 生きにくい子のたまり場だった 真面目な子 そうでない子 教室では呼…

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