心の出汁巻き玉子

スペイン マドリッドに住んで、もう36年に
なる。
今では日本食も手軽に手に入るようになったけれど値段が気に入らない。
異国暮らしの寂しさを癒してくれるのは
なんといっても生まれ故郷の、なんてこと
ない家庭料理だったりする。
わたしの場合は、出汁巻き玉子。
甘い卵焼き派の人たちには、敬意を表するが
わたしは、やっぱりたっぷりと出汁を含んだ
ふわふわの出汁巻き玉子!
丸いフライパンにオリーブオイルを少々、
出汁でのばした卵をフライパンに流し込んでは、慎重に巻いていく。
なんといっても巻きはじめが一番難しい。
心を落ち着けてそーっと薄い玉子の膜がちぎれてしまわないように、ちょっとづつ、でも
火が入り過ぎないように出来るだけ手早く巻いていく。
ただ、玉子を巻くことだけに自分がいる。
だんだん太く巻き上がっていく玉子焼きを見ているだけて、心が癒され、焼き上がった
玉子焼きを巻き簾の上にゴロンと乗せて最後に形を整える。
男前に出来上がった出し巻き玉子に包丁をいれると、断面は思った通りのしっとり尚且つ
しっかりと木の年輪のような層が出来ている。
これほと、その時のわたしの精神状態が反映される料理が他にあるだろうか?
上手に出来上がった出し巻き玉子を眺めながら、わたしは、まだまだこの国で頑張って
生きていけるなと思えるのである。

#元気をもらったあの食事

なんと、ありがたいことでしょう。あなたの、優しいお心に感謝