見出し画像

あの日、星へ込めた願いの続きを【シャニ6th横浜Day1】

 4月20日(土),21日(日)———神奈川県横浜市にあるKアリーナ横浜にて「THE IDOLM@STER SHINY COLORS 6thLIVE TOUR Come and Unite! Fantastic Fireworks」が開催された。筆者は本公演に両日参加したわけだが、公演内で披露されたとある曲にボコボコにされたのだ。


 そう、『デビ太郎のうた』だ。

「なんでそんなネタ曲に壊されてんだよwww」
「こやつおかしいワロタwwwwww」
「雑魚wwwwwwwwwwwwww」
「グフwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

 と嘲笑う無知なオタクもいるだろう。笑っていられるのも今のうちだ。そんなオタクのために1つ1つ諭して、もう2度と"デビ太郎"なんて敬意のカケラもない無礼な呼び方ができない身体にしてやろう。今日から彼は"先生"だ。

※ライブレポ風な描き始めだが、本質は"ぬいぐるみに精神は宿る"と信じている少しおかしな成人男性の鳴き声だ。

 以下、ネタバレ注意



大崎家のデビ太郎先生

 まず、皆が知っているであろう"大崎家のデビ太郎先生"についてだ。この個体は、かつて大崎姉妹が幼少の頃に彼女らが流れ星に願い、そして彼女らのもとに訪れた個体だ。ここであえて"個体"と識別化していることにも訳がある。

 大崎家には姉である甜花が収集したデビ太郎コレクションが無数に存在している。しかし、妹である甘奈は"デビ太郎クッション"を"デビ太郎"と認知していない。このクッションがどのような形態をしているかは不明だが、これらは"デビ太郎"ではなく、前述の星に願い訪れた個体のみを"デビ太郎"と識別する文化が存在していることを表している。

違うらしい……

 ではなぜそういった文化が形成され、先生が全デビ太郎の憧れである唯一無二のゴールデンポジションを獲得したのか———
 それは先生が大崎家に訪れてから今に至るまでの歴史にある。

デビ太郎先生と大崎姉妹

 『流れ星が消えるまでのジャーニー』というイベントコミュをご存知だろうか?

 世間一般では"大崎姉妹のお話"として認知されており、それに関しては異議等はなく、むしろその通りであるとまで思っている。だが、その物語の側面としてデビ太郎先生が彼女らと強固な絆で結ばれた経緯が記されている。

 デビ太郎先生は彼女らの願いのもと大崎家へ訪れている。これは、家族で双子座流星群を観測しに行った際に両親より「流れ星が消えるまでに願い事を3回することで願いが叶う」と教えられたことが起因しており、健気な少女らは日々練習をし、懸命に口を紡ぎ、努力の末に見事願いを唱えることに成功する。その願いこそが"デビ太郎"であったのだ。

デビたろう

 彼がホームに迎え入れられた際は少女たちはそれはもう嬉々とし毎日愛情を注いだ。あそぶ時も、ごはんの時も、おやつの時も、おひるねの時も、"ふたりの真ん中"に置いて、まるで家族のように過ごした。しかし、そんな日々の中に甜花は(…だんだんデビ太郎になーちゃん取られてる。)と嫉妬してしまったのだ。oh……

幼少期姉妹のディレクションが秀逸

 嫉妬心メラった甜花は、「デビ太郎はもうなーちゃんにあげるっ。」と彼を投げてしまったのだ。かわいい。そんな甜花をみて心配する甘奈だが、彼女は1つの提案をする。それは『デビ太郎を甜花へ譲る』ことだ。甘奈は"自分ばっかりデビ太郎と遊んでいて、それが不満だったのだろう"と思ったのだ。実際は違う。ただ年相応ともとれる感性やそれに伴ったすれちがいには今でも深く唸る無垢さを備えている。結局すれちがいのまま嫉妬の張本人であるデビ太郎と一緒になった甜花だが、日々生活する度に彼の存在を誰よりも好きになっていく。姉妹たちを繋いでくれた、そしてダメな自分を見守ってくれた彼のことを。(pSSR【好きなものはなんですか?】大崎甜花にて、当時の心境に関して語られているため要チェック)

"""限定"""pSSR【好きなものはなんですか?】大崎甜花

 上記を経て、デビ太郎先生は大崎家の中でも甜花のトレードマークになった。ただこれは甜花が独占するような話でも無い。現在の扱いを鑑みる限り、彼は大崎家の一員として家族のように慕われているが"誰のものか?"と聞かれれば"甜花のもの"と答える程度だろう。

家族

 このパートは"デビ太郎先生を起点及び終点とした双子の喧嘩と仲直り"のお話だったのだ。作中で喧嘩らしい喧嘩をする大崎姉妹はおそらくここだけだろう。そんな大事な事態も解決するどころか1枚噛んでいる彼はずっと双子をすぐ側で、1番近いところで見守っていたとも形容できるだろう。(もし他に喧嘩描写があるようだったらこっそり教えて欲しい。みたい。)

 こうしてデビ太郎先生は全デビ太郎憧れのゴールデンポジションへ———と息をつきたいところだが、また彼にも彼なりの壁が立ちふさがることになる。

課題

 イベントシナリオでは各々へ課題が提示されるが、本シナリオではデビ太郎先生にも以下の課題が提示される。
 ①大崎姉妹がアイドルになる
 ②先生自身がもうボロボロになっている

 まず①、彼は"大崎家の甜花・甘奈"の間に置いてもらいをずっと一番近くで彼女らを見守ってきた。だが、彼女らは"アイドルの大崎甜花・大崎甘奈"にとして遠いステージへ羽ばたいてしまった。彼にはそのステージへ行き着く術が"きっと飛べるはずのちいさな羽"という不確かなものしかない。

 続いて②、彼は紛れも無い"ぬいぐるみ"だ。シュールに見えると嘲笑ったそこ。恥を知れ。形態そのものとしてはただの布と綿かもしれないが、魂や形成された心は姉妹の中で"存在"として今も生きている。ト○スト○リーを見ろ。だがしかし、存在に心を寄せていても"ぬいぐるみ"という依り代があることには変わりない。月日が経てば当然劣化してしまうし、必要とされる場面が多岐に渡ればその分彼の身は削れていってしまう。

 上記難関な課題が彼のもとに降り注いでいるが、なんとその両方を綺麗に解決してくれる人物が現れた。

デビ太郎先生と桑山千雪

 難関な課題を解決してくれる人物とは、皆ご存知であろう『桑山千雪』だ。彼女は『アルストロメリア』で大崎姉妹と一緒にユニットを組みアイドル活動をしている前職・雑貨屋の裁縫大好きで素敵な女性(23)だ。

可憐だ

 『流れ星が消えるまでのジャーニー』ではデビ太郎先生と桑山千雪の関係性にも触れられる。

 本シナリオで甘奈は風邪で寝込んでしまった際、たまたま視聴したテレビ番組のよくある星座占いコーナーで"ラッキーアイテム・大きなぬいぐるみ"と占われているのを目にする。それに従い、デビ太郎先生を探すが"いない"。不思議に思うがそこへ甜花がやってきて話題転換となってしまう。
 彼はどこへいってしまったのか———。
 答えは後日千雪が大崎宅を訪れた際に知らされる。

"連れて帰っちゃった"…………..

 そう、千雪はボロボロでもうぬいぐるみとしての形態を保つことが困難なデビ太郎先生を持ち出して綺麗に直していたのである。アイドルとしてこれから一番近くで姉妹を見守っていく千雪が、大崎家の一員として今まで一番近くで姉妹を見守ってきたデビ太郎先生に、だ。これは千雪からデビ太郎へのこれまでの労いや感謝ともとれる干渉であり、同時に"姉妹の好き"を守護ろうとする、千雪が姉妹を大切に思う信頼的行動でもある。アイドルとして羽ばたく姉妹らを見守ることが出来ないデビ太郎先生が、姉妹のこれからを託すことが出来る逸材と繋がったシーンだ。
 ただ、シャニマスは時にドライで温かみのある物語だ。デビ太郎は"綺麗に直っている"。姉妹の全てを見守ることは叶わないが"大崎家の甜花・甘奈"をこれからも見守ることができる身体になったのだ。
 デビ太郎先生はアイドルになることはできないが、同様に千雪も大崎家の一員になることはできない。お互いがお互いを補う形で彼女らを見守る術を手に入れていれたのだ。これはもう共犯だろ。デビちゆはある。

【Pop-Up!My ♡】

 個人を通しアルストロメリアとデビ太郎先生は結束を深めていったが、2023/11/21にデビ太郎信者に激震が走るカードが実装された。

【Pop-Up!My ♡】だ。イラストの通りデビ太郎の話である。個人として昨年度の最優秀サポカをあげるとしたら本カードを推薦するだろう。

 大崎甜花はずっとデビ太郎に会いたい、お話ししたい、居たらいいのにな、と願いを寄せていた。デビ太郎という存在を愛していたからだ。デビ太郎のぬいぐるみを大切にする思いはもちろんのこと、彼女からすれば所謂イマジナリーであり依り代がなくとも自身の意思でいつでも心を寄せることができる。ただそれは彼女の中のデビ太郎であり、デビ太郎ではない。だから、実際に会いたい、お話ししたいなのだ。

 些細な願いを妹へ呟く何ともない夜を経た、ある日。アルストロメリアはプロデューサーから呼び出され、次の仕事について説明を受けていた。

これを千雪が言うのが"良い"

 まさかの"デビ太郎ポップアップショップの一日店長"に就任するのだ。しかも、キャッチコピーは『デビ太郎とアルストロメリアがやってくる!』。どうやらプロデューサーが甜花の頑張りに応え、尽力してくれたそうだ。
自分の頑張りが自分の好きに繋がり、いろいろな人が喜んでくれる。そして、ずっと会いたいと思っていたデビ太郎先生に会うことができる。こんな幸せがあるのだろうかと思うが、これは紛れもない甜花自身の頑張りが周囲を動かした結果であり、彼女へ向けたご褒美でもあるだろう。

ディレクションッ!!!!!!!!

 イベント当日。緊張した趣で甘奈と千雪に万全の状態で会うための準備をしてもらう甜花。おめかしをし、スマホのバッテリーも確認し、そしてずっとずっと会いたかった彼があらわれる。

~DEBITARO SHOP~

 デビ太郎へ抱き着く甜花と嬉々としてスマホを向ける甘奈、それを見守る千雪。それぞれにデビ太郎への想いやそれぞれの好きが実現した夢のような空間だ。そんな幸せの最中、甜花はデビ太郎先生へお話は出来ないことを承知で声をかける。

 幼い頃からずっと見守ってきた少女が、一緒に頑張る決意を表明してくれた。出会った頃は自分の思いすら口にすることが出来ず、それがきっかけで一緒にいることになった少女が、今では逞しく誰かのために"頑張ろう"と手を取ってくれたのだ。返事が無くても、彼女なりの言葉と行動で何かを伝えようと。

ボクハデビタロウ ナミダガトマラナイ

 そんなやり取りを経て、ストアは開店し多くのデビ太郎ファンとアルストオタクが訪れた。それぞれがそれぞれの目的のもと店内を回り、それぞれの"好き"を噛みしめていた。甜花も宣言の通り懸命に頑張っていたが、ふとしたことに気づきを得た。

 今日来たたくさんのデビ太郎ファン。その数だけそれぞれの思い出と"デビ太郎"がいて、そこにはその人にしかない"大好き"が詰まっている。まるで"自分"のように———
 そんな大好きを通してたくさんの笑顔を与えているのは紛れもない"デビ太郎"であること。また、彼の活躍をみて甜花も"アルストロメリア"として笑顔の咲かせたい、と彼女自身も彼を通して未来を見出したのだ。

 その日の夜。いつも通り甜花はデビ太郎先生とベッドに入り、今日を振り返る。たくさんの"好き"に囲まれて幸せだった空間。でも、彼女はもう"自分
だけ"
の好きを知っていた。

3コミュ目『My only デビ太郎』




デビ太郎先生とアルストロメリア

 4月20日(土),21日(日)———神奈川県横浜市にあるKアリーナ横浜にて「THE IDOLM@STER SHINY COLORS 6thLIVE TOUR Come and Unite! Fantastic Fireworks」が開催された。筆者は本公演に両日参加したわけだが、公演内で披露されたとある曲にボコボコにされたのだ。

 奇抜で暴力的な斑鳩ルカ単身の『ラビリンス・レジスタンス』。圧倒され唖然としている中、深い闇の中に現れる大きなシルエットと3つの人影。DJ小糸がフェードとつまみを操り音が未来を予感させ始めた後、"彼ら"にスポットライトが当たる。

『デビ太郎のうた』

 筆者の脳内には『流れ星が消えるまでのジャーニー』や【Pop-Up!My ♡】などデビ太郎にまつわる様々な記憶が廻った。
 ずっと叶わないと思っていた。デビ太郎先生が"アイドルの大崎甜花・大崎甘奈"を見守ること。デビ太郎先生が千雪と一緒に姉妹を見守ること。そして、彼女らの頑張りがデビ太郎先生に大きな翼を与えること。
 またしても彼女らの頑張りは"好き"と繋がり、"アルストロメリア"と一緒にアイドルのステージに立つことが叶ったのだ。その事実だけが胸がいっぱいになってしまって、彼らを見ている眼差しにも様々な色がありとても温かい色をしていることが知れて嬉しかった。

ありがとう、DJ小糸———

おわりに

 僕は見てたよ。間奏の時にデビ太郎の左翼(他意は無い)をしっかりと握りしめていた前川さんを———ありがとう。