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14. ペイントの種類でディジュリドゥを選ぶ2

経年変化と共に色あせていくチベットの砂曼荼羅のようなオーカペイント

個人的にはシンプルなペイントであってもオーカで描かれているディジュリドゥが一番クールに感じます。ユーカリの木と岩絵具という自然の中に存在する素材だけで作られているというテイストを強く感じさせるからです。また、画家自身もわざわざ手間のかかるオーカで描くのだから気持ちがのっているんじゃないかなと感じます。

[古いオーカ・ペイント]70-80年代のPort KeatsのKenbi。ほとんど演奏されずに保管されていたと思われる楽器ですが、このように色褪せています。特に白は明らかに塗装が薄くなっています。逆に時間の経過を感じる味が出ている、ともとらえられます。真鍮のドアハンドルや、飴色になった木製の手すりのような経年変化を楽しむ、という視点から見ればオーカ・ペイントは味わい深い。

ボディペイントにオーカが使われる時には時間をかけて丁寧に描かれたアートも、チベットの砂曼荼羅のように最終的には水で洗い流され消されてしまいます。現在ではディジュリドゥをペイントする際には木工用ボンドを混ぜるようになって、ある程度定着する力が強くなっていますが、特に手が触れる部分を中心に全体的に徐々に色が薄まっていきます。

[古いオーカ・ペイント2]前述のDjul'djul Gurruwiwiの父親Mithinarri Gurruwiwiのイダキ。ペイントは所々はがれ、色もくすんで黒ずんだ感じになっています。ジーンズはオールド加工されたものがあったりしますが、この風合いは経年変化以外ではなかなか出てきません。

オーカペイントの楽器を選ぶということは、そういう経年変化も含めて楽しんでいくような心持ちが必要なのかもしれません。荒技になりますがオーカの上から木工用ボンドを塗るという方法もあります。その場合ペイントはしっかりと保持されますが、ツヤツヤの表面になります。


しっかりと定着してはがれにくく色あせにくいアクリルペイント

アクリルペイントのいい所は定着性の高さと色あせが少ないという点です。擦ったりぶつけたりしない限りペイントはなかなかはがれません。色褪せも少なく、どちらかといえば汚れを吸着して鮮やかさが弱まるという感じです。現地と同じアクリル絵の具を使えばレタッチもしやすいので、扱いに繊細さが不要で気楽なところが優れた点でしょう。

[アクリルペイントのイダキ]イダキ奏者として名高い故M. Munyarryunのプレイベート・イダキ。ぶつけたり、こすれたりすることで一部ペイントが剥離しています。それ以外の部分はほとんど色あせていません。全体的に色あせていくオーカに比べると色の鮮やかさをキープしているように見えます。

このようにはがれにくいゆえの扱いやすさ、レタッチのしやすさからくる修理のしやすさがあることで、それぞれのアーティストの特徴を感じるペイントがされたディジュリドゥを楽しみやすいのがアクリルペイントでしょう。


テープを巻いたり、色を塗ったり自由に扱えるノーペイント

ノーペイントの楽器は買った本人が忘れてしまうと製作者を特定しづらいのが一番困る点ですが、それを気にしないなら一番ラフに扱えて修理も気楽にできます。最終的にアボリジナルの人たちがするようにテープを巻く、という人にはノーペイントがベストでしょう。

[ノーペイントのイダキ]Brrlga Munyarryunの作った木肌を残したノーペイントのイダキ。このイダキは比較的丁寧にサンディングされている方ですが、アボリジナルが作るディジュリドゥの多くはこのような少し荒い表面仕上げになっていることが多いです。ノン・アボリジナルの作るディジュリドゥはもっと細かい番手のサンディングをして厚みのあるツヤツヤのコーティングをされることが多いです。通常ペイントに隠れてしまう写真のような節穴の場所がわかるのもメンテしやすいポイントです。

現地のディジュリドゥ奏者たちが自分用に使う楽器のほとんどがノーペイントの楽器にテープぐるぐる巻き、あるいは1色ベタ塗りの場合が多いです。あの著名なディジュリドゥ・マスターDavid BlanasiのプライベートMagoも赤一色で塗られていたそうです。自分の手元で好きな色を塗るのもいいですよね。

[テープが巻かれたイダキ]Bathirri Mununggurrのプレイベート・イダキ。クラックによる空気もれをカバーするためにテープを巻いたり、自分の楽器をアイデンティファイするために巻くこともあるようです。美しいアートに彩られた販売用に作られた楽器とは真逆のクールさを感じます。

ディジュリドゥに描かれるアートもアボリジナルが作るオーセンティックなディジュリドゥを選ぶ時の重要なポイントです。ペイントの種類を知って自分の好みや性格にフィットする楽器をチョイスするのもいいですし、手にした楽器のペイントの種類に合わせて扱い方を変えて付き合ってみてください。

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