マガジンのカバー画像

ディジュリドゥの修理とメンテナンス

9
ディジュリドゥのクラックはなぜ起こる?四季で変化する湿度とディジュリドゥの関係と日々のメンテナンス方法。クラックの種類やその対処法。ディジュリドゥを傷つけない修理方法から本格的な…
運営しているクリエイター

記事一覧

1. ディジュリドゥの管理方法

ディジュリドゥの季節による取り扱いの違い ディジュリドゥの取り扱いで一番気を使う点って何でしょう?ユーカリの木だけで作られるその性質上、温度と湿度は木の収縮と膨張に大きな影響を与えます。 温度と湿度は日本の四季に合わせて大きく変化します。空気中の水蒸気の割合をしめす相対湿度で2011年の東京のサンプルを見てみると、11-4月に低い値になり、5-10月に高い値になっていました。簡単に言うと気温が高くなる梅雨から夏の温度が高い時期に湿度が高く、気温の下がる真冬の時期に乾燥する

2. 日々のメンテナンス方法

アボリジナルの人々のディジュリドゥのメンテナンス方法は? アボリジナルのディジュリドゥ奏者たちはディジュリドゥをどのように扱っているのか?細かいケアをしているようには見えませんが、演奏感の低下やクラックなどが起こった時にはそれを食い止める方法としてアボリジナルのディジュリドゥ奏者たちはいろんな方法で対応しています。 アボリジナルのディジュリドゥ管理 演奏に違和感があれば水を注ぐ クラックができればビニールテープかダクトテープで巻いてシーリングする 小さなホールは蜜蝋

3. ディジュリドゥをオイリングする方法

ディジュリドゥに適したオイルとは 油には乾性油と不乾性油があります。乾性油は空気に触れて酸化し固化してもとの液状になることがありません。それによって塗膜が形成されます。不乾性油は中華料理店の床のようにヌルヌルした液状のままの状態を維持しますので演奏感を大幅に損なう可能性があります。 乾性油は表面に塗膜を形成します。それにより木製品の表面を保護し傷や割れを防ぐ効果があります。 オイリングの注意点 一気にドバっと入れてベチャベチャにしない 空洞内に残ったオイルは拭き取る

4. 演奏によるクラックの原因と対処

含水率100〜200%の生木でディジュリドゥは作られる アコースティックギターやウッドベースが割れるとか、木製のリコーダーが割れるということはあまり聞きませんが、ディジュリドゥでは結構な頻度でクラックが散発します。 それはディジュリドゥが生木を使って作られるのが一番の原因だと考えられます。カットされたばかりの生木の含水率は100~200%もあり、自然大気中での平衡状態での木材の含水率は15%ほどなのでその落差は大きい。生木で製作がはじまると急激に木の水分は抜けていきます。

5. 薄さによるクラックの原因と対処法

何度も同じ所が割れるのはなぜ? ディジュリドゥの修理をしても同じ場所に何度もクラックが入る場合があります。それは一体なぜなんでしょう?音を鳴らすあらゆる楽器は振動しています。ピアノやギターは弦を弾くことで振動した音を増幅するような形状をしています。 ディジュリドゥの場合は唇と声でできた振動が空洞内部を通過しながら増幅していく長く大きな気鳴楽器、管楽器と考えられます。ディジュリドゥを鳴らした時、その振動は空洞が完全にシールされていることでボトムまで完全に伝わります。しかし、

6. ヘアライン・クラックをどう取り扱うか

ヘアライン・クラックとは ラインとは髪の毛ほどの細さという意味で、このクラックが入る場合は無数にあちこちに起ることが多いです。実際、ヘアライン・クラックはどうやってできるのでしょう? アボリジナルの作るディジュリドゥの多くは最終的に仕上がった楽器全体に木工用ボンドを塗り、ペイントが施されます。その作業工程を見ていると、木工用ボンドやペイントの乾燥のタイミングで速く乾燥させるために直射日光に当てることがあります。 この時含水率の高い状態の生木から急激に水が抜けて、木目に沿

7. 節抜けやその他のクラック

節抜けについて 節を含んだ木を木工用ボンドでコーティングした上にペイントがされていると見た目で節があることはわかりにくいです。木の性質上、節の部分は次第にやせていって隙間でできてしまいます。その場合には節を抜いて、穴の部分をエポキシボンドで埋めて修理します。 節の部分で少しでも空気もれがあると、多少なりとも演奏感に影響します。単純に口をつけて吸う方法で空気もれの有無を確認できますし、オイリングをした場合にもオイルが漏れ出てくるので見つけるきっかけになります。 衝撃による

8. エポキシ樹脂でディジュリドゥの修理 - 道具編

エポキシ樹脂での修理は丁寧にやれば、もともとそこにホールやクラックがあったことがわからないくらい、きれいに丈夫に修理することができます。美しく仕上げるには少しの道具と、ちょっとした技術だけです。まずは必要な道具類から。 修理に必要な道具 彫刻刀 三角刀 彫刻刀 丸刀 平ヤスリ 単目細目(紙ヤスリでも代用可) 丸ヤスリ 単目中目(紙ヤスリでも代用可) 紙ヤスリ 40 80 160番手 養生テープ 木工用ボンド 小さめの刷毛 絵筆 木屑(赤身、白太の2種類用

9. エポキシ樹脂でディジュリドゥの修理 - 実践編

本格的な修理をする場合は彫刻刀の三角刀でクラックのすじがなくなるまで削ります。つぎに三角刀で削ることで荒れてしまった表面をヤスリでならします。この時三角刀でできた溝が鋭角にならないようにすることで、一番奥までエポキシ樹脂が入るようになります。 エポキシ樹脂のA液とB液をしっかりと混ぜ合わせます。容器を下にコンコンと叩きつけて液体の中の気泡を抜いたら、原液をクラックの溝に薄くこすりつけます。その後、クラック周辺の木の色に近い木屑を混ぜ合わせます。エポキシと木屑は1:1程度です