百汰狼(ももたろう)
むかしむかし、あるところに、オ・ジィ・サンとオ・バァ・サンが住んでいました。
彼ら”オ”族は、人里離れた山奥に、たった五十人ほどで小さな村をつくっていました。”オ”族は、全員、剣を極めるためだけに存在するといわれる修羅の一族でした。
現在、一族の中でも聖(サン)の名を冠する者、すなわち剣聖は、ジィとバァの二人だけです。
ある日、オ・ジィ・サンは山へ”死馬狩り”(しばかり)に、オ・バァ・サンは川へ”千断苦”(せんたく)に行きました。
「……998……999……1000! ハァ……ハァ……。まったく、年はとりたくないもんだねぇ。たった1000回”川を断ち切る”だけで息があがっちまうなんて。……ん? なんだいありゃ?」
オ・バァ・サンが日課の”千断苦”を終えたちょうどその時、川の上流から何かが流れてくるのを発見しました。
「あれは”鈍武羅虎”(どんぶらこ)じゃぁないかい!」
”鈍武羅虎”は、体長4メートル、高さ2メートルほどの巨体をほこる虎で、その全身は亀の甲羅のような装甲におおわれています。たとえ”オ”族であっても、一人で勝つことは難しいと言われています。
しかし、オ・バァ・サンは恐れなどみじんも見せずに剣を構え、にやりと笑いながら言いました。
「こりゃぁ食いでがありそうだね。良いおみやげになるわい」
――グワォォォォ!
――キエェェェイ!
二匹の修羅は叫び声をあげながら、ぶつかりあいます。
(つづく)(嘘)