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《ジゼル》の音楽 ①基本情報

音楽大学で修士論文を書いたものの、その研究の成果は大学の図書館で眠りにつき、私の研究欲もイバラに覆われていたのですが、どうやらどこかでリラの精が王子様を見つけてくれたみたいです。研究欲が復活したということはカラボスを倒してくれたのでしょう。


タイトルがジゼルなのに眠りの話をしてごめんなさい。ジゼルの話をしましょう。


まずは、どこにでも書いてあることですが、基本的な情報です。どなたか論文を書く際にはどうぞコピペして使ってください。


《ジゼル Giselle》

1.台本

テオフィル・ゴーティエ Théophile Gautier( 1811-1872 )

サン=ジョルジュ J.H.Vernoy de Saint-Georges( 1801-1875 )


2.振付

ジャン・コラーリ Jean Coralli( 1779-1854 )

ジュール・ペロー Jules Joseph Perrot( 1810-1892 )


3.音楽

アドルフ・アダン Adolphe Adam( 1803-1856 )


4.初演

1841年6月28日、パリ・オペラ座にて

ジゼル役:カルロッタ・グリジ Carlotta Grisi( 1819-1899 )

アルブレヒト役:リュシアン・プティパ Lucien Petipa( 1815-1898 )

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上記情報の参考文献はこちら↓

クレイン、 デブラ&マックレル、 ジュディス 2010 『オックスフォード バレエ ダンス事典』 鈴木晶(監訳) 赤尾雄人、 海野敏、 鈴木晶、 長野由紀(訳) 東京:平凡社。

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なお、初演当時のコラーリとペローによる振付は現存していません。

現在劇場で観ることのできる《ジゼル》は、マリウス・プティパ Marius Petipa( 1818-1910 )によって手が加えられたものです。


コラーリとペローによる振付を知る手掛かりとして有力なのは、1868-69 年にオペラ座のメートル・ド・バレエ(芸術監督兼振付家)を務めたアンリ・ジュスタマン Henri Justamant( 1815-1890 )による振付メモです。

ジュスタマンが 1864 年以降に記録した、 パリ初演版かそれを元にしたペロー版のメモであると推測されています。

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振付についての参考文献はこちら↓

高島登美枝 2018 「 七月王政期バレエにおける台本・音楽・振付の相互作用――《ジゼル》における「踊り」の両義性とその具現―― 」 2017 年度東京藝術大学修士学位論文。

ジュスタマンの振付メモは序章にて言及されています。

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また、音楽はアダンによるものですが、第1幕中盤における、「ペザント(農民)のパ・ド・ドゥ」と呼ばれる6曲から成るパ・ド・ドゥはブルクミュラー Friedrich Burgmüller( 1806-1874 )が作曲しました。《25の練習曲》で知られるあの人です。この6曲は初演時から使われていました。


他にも、プティパが改訂した際に追加された楽曲が定着した事例もあります。「ペザント」はブルクミュラーによるものですが、よくコンクールで踊られているペザントのヴァリエーション(袖からソッテで出てくるあれ)はプティパの時代に追加されたもので、ブルクミュラーの曲ではありません。ややこしいですね。


第1幕のジゼルのヴァリエーションも、第2幕のアルブレヒトのヴァリエーション直後にジゼルが踊る曲(途中からワルツになるあれ)も、初演時にはありませんでした。時代とともに主役の見せ場を増やしていったのでしょうか。

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音楽についての参考文献はこちら↓


○マリウス・プティパ・ソサイエティのウェブサイト

https://petipasociety.com/giselle/


○高島登美枝 2020 「マリウス・プティパとロマンティック・バレエ―― 1884 年改訂版《ジゼ ル》をめぐって――」『昭和音楽大学研究紀要』 40: 6-19 。

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今回は基本的な情報について書きました。


このnoteは、バレエにおける、特に音楽についてのnoteにしていきたいので、次回は作曲者アダンについて書こうと思います。


初演から100年以上(そろそろ200年!)経過しているにもかかわらず、まだまだ私たちを魅了してやまないこのバレエを、音楽的な観点から堪能していきたいと思います。


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