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【今日コレ受けvol.033】ifの積み重ね

旧財閥系企業の社員だった祖父は、第二次世界大戦中は航空機のエンジンを作る工場で働いていた。その工場は米軍の日本本土空襲の第一目標のひとつで、たびたび爆撃の標的になったそうだ。

1944年12月13日、B29戦闘機70機の空襲を受けて工場は壊滅し、働いていた300人余りの尊い命が失われた。祖父は奇跡的に命を拾った。亡くなった人の家を一軒一軒回り、空襲から一週間後にようやく帰宅した時には、自分の葬式の準備が進められていたという。

その後祖父は、工場疎開を経て、戦地に赴くことになる。そこで彼は流れ弾に当たるのだが、銃弾を受けたのが歯だったため死を免れた。

歴史に「if」はないと言われる。
でもどうしても考えてしまう。祖父が戦死していたら。祖父の兄が生きていたら。
そして、気づく。それは、遥か遠い昔の出来事ではない。手を触れ頭を撫でてもらえるくらいの関係性の人が、体験したことだったのだ。

Next generation【さとゆみの今日もコレカラ/033】

バスケットボールの取材をするようになり、その工場に併設された体育館を度々訪れるようになった。行くたびに、「水を飲むと前歯の穴から水がピューっと飛び出て困ったよ」と遠い目で語っていた祖父を思い出す。バスケの仕事に出会ったことには、きっと、祖父のifの延長にある。


毎朝7時に更新、24時間限定のショートエッセイCORECOLOR編集長「さとゆみの今日もコレカラ」。「朝ドラ受け」のように、その日の「今日もコレカラ」を受けてそれぞれが自由に書く「遊び」です。

Next generation【さとゆみの今日もコレカラ/033】

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