わたしが言葉を書く理由[66/100]
家族が寝静まった家の玄関をそっと開ける。履いていたブーツはちゃんと外で脱ぎやすいようにチャックを下げてある。鍵を閉める音さえも気をつけて、息すらも忍ばせて、リビングのドアをすり抜ける。
まだ人の気配がほのかに残るリビングの電気をつけて、やっと一息つく。わたしは子どもが生まれてからも、半年に一度、友だちと飲みに行った。
それは、わたしが母に“なりすぎない”ための大切な時間だった。
そんなとき、娘たちはいつも、寝てから帰ってくるわたしにお手紙を書いてくれていた。
「ママ、い