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生活の建築知識.21

おはようございます。

以前コンクリート打ち放しのお話(生活の建築知識.6)をした際に、コンクリートと鉄の相性について触れました。
その内容を踏まえて、鉄の性質と建築を通して生活での鉄との付き合い方について今回は説明をしていきます。

鉄筋コンクリート造は、鉄筋を組んだところにコンクリートを流して固めた柱や梁もしくは壁を構造体とする建築の造り方です。
コンクリートは圧縮力に強く引張力に弱い、鉄筋は圧縮力に弱く引張に強いという性質を一緒にすることで弱点を補い合うことが出来ます。
また、鉄筋はすぐに酸化鉄つまり錆やすいところをアルカリ性のコンクリートで覆うことで、酸化防止になるため非常に相性が良いとされています。
外気や土に接するコンクリート部分は外部の影響を考慮してかぶりを設けます。
かぶりとは本来構造体として必要なコンクリートの厚みに加えて、鉄筋保護を理由に厚みを増す部分のことを指します。
構造体として200mmの壁厚が必要だったら外気側に20mmかぶりを設けて220mmにするといった具合です。
つまりは鉄筋が健全な状態であることが鉄筋コンクリート造の要でなることを意味しています。

経験上ですが、割と最近(ここ30年くらい)の築年数の鉄筋コンクリート造の建築物は綺麗に仕上がっている印象がありますが、古くなると粗悪な施工をした痕跡があるケースがあります。
今ではなかなか考えられませんが、室内の壁を壊して躯体を見てみたら鉄筋が剥き出しであったこともあります。
以前もお話しましたが、実際に鉄筋コンクリート造は施工が難しく、不測の事態が起こり補修を余儀なくされることはあります。
しっかりとした補修を行えば構造体としては問題ありませんが、コンクリート打ち放しはこれも許容せず施工するのでなお難しいという話でした。

しかし実際に鉄が錆びてしまったらどれほど悪いのかというと、短期間であればさほど問題はありません。
適切に処理すれば問題とする必要はないでしょう。
ただ、酸化鉄には非常に厄介な性質があるため長期間放置することは危険があります。

まず鉄は錆びると膨張するというところです。
膨張することで、密着していたコンクリート面と剥離をするおそれが出てきます。
場合によっては表面のコンクリート爆裂させてしまうケースもあります。
コンクリートで保護されていた鉄筋は空気に触れることになるので、さらに酸化が進むことになります。

また、鉄の酸化は表面だけでなく徐々に内部にまで進行します。
これもやはりコンクリートで保護していれば進行は遅くなりますが、露出してると進むペースは早まるでしょう。

金属でもアルミニウムは錆びないとよく言われることがあると思います。
確かに見た目に錆びは起きないのですが、実際には酸化しています。
なんならすぐに酸化しています。
しかし、アルミニウムは酸化をすると表面に薄い皮膜を構成する特性があり、その被膜が結果的にアルミニウムを保護する役割を担ってくれます。

話は戻りますが、鉄は酸化すると膨張し進行するという性質を封じ込めることが建材として利用するには必要な処置となります。

鉄は建材として多くの箇所に用いられています。
鉄骨階段や鉄製の手すりがボロボロになってしまっているのをどこかで見たことがあるのではないでしょうか?
あれも基本的には同じ性質が原因です。
外気に触れる場所で鉄を使う際には必ず錆止めのために保護用塗料などを塗ります。
しかし紫外線や衝撃などでそれが剥がれてしまうと、そこから錆が始まります。
少しだからいいかと放っておくと、錆びが膨張し周辺の保護材を壊しながらさらに進行していきます。
最悪の場合は、少しの荷重をかけただけでも崩れてしまうような状態となり、復旧は不可能となります。
もし、皆さんのお宅でも鉄性の階段・手摺・フェンスなどがあれば確認してみて、保護の塗料が剥がれてしまっていたら錆を削って錆止め塗料を塗ってみてください。
それだけで寿命が大きく変わるはずです。
本来なら定期的な塗装が必要ですが、毎回やってられないので、応急処置をすることで長く利用出来ます。

鉄は他の建材より密度が高く強度があるため、シャープな仕上がりが出来ますが、メンテナンスを怠ると怪我の原因ともなってしまいます。
長く付き合うためには、たまに確認してあげて保護をしてあげることで上手く付き合っていってもらえればと思います。

では、また。

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