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生活の建築知識.83

おはようございます。

最近のリノベーションでは、自転車置きを玄関に設けるため土間を広げる計画が増えてきました。
自転車人口もだいぶ増え、また盗難対策としても外ではなく室内に入れたいという要望から生まれたものでしょう。
マンションであれば、だいたい玄関付近は共用廊下に面しており、あまり積極的に窓を開放するような居室としても使いづらく、ひたすら収納関係で固めてしまうのも確かにアリなのかと思います。
これまでの玄関と言えば、廊下の幅+靴収納分だけの広さを確保して、1m程度の奥行を確保するものが多く見受けられました。
使い勝手としてもあまり考え込まれたものでもなく、しかしすぐに通過する場所だからと意識も向かない箇所でもあります。
そのため玄関は改善の余地が多く箇所とも言えます。
今回は玄関について、今と昔を少し比較しながら説明していきます。

昔、特に田舎の玄関は広さや設えは豪華にすることが多くありました。
私の祖父の家は、農家で敷地も広かったため玄関自体が大きく、大黒柱も玄関に現しで設ける仕様でした。
さらに古くなると三和土(たたき)と言われる土を使った土間で玄関が構成されておりました。
昔や田舎では玄関はただ靴を履き脱ぎするだけの空間ではなく、来客をもてなしたり、作業をする空間でもありました。
今日では、玄関で誰かをもてなすということはほとんどなくなり、核家族の増加によって玄関の広さを小さくすることで、多くの住宅供給を叶えた歴史があります。
そのため、出入口であり靴の収納場所という役割しか残らず、機能面・意匠面において大きく削がれる形となったのが現在の仕様と言えるでしょう。
ただライフスタイルの多様化に伴い、また違った形で変容しようとしています。
その一つが、自転車置き場となります。
他にもベビーカーや釣り道具、ゴルフバッグなども外でしか使わないものを室内に置く必要はありません。
室内で使用する道具類でなければ、むしろ玄関付近に収納出来ることで、すぐに取り出せて頻度は高くないにしても利便性が上がることでしょう。
さらに、近年では姿見として大きな鏡を玄関付近に設ける方も多く、外に行く直前にコーディネートを最終確認するようにされています。
靴が玄関付近にあるため、ファッションを全て合わせて確認出来る瞬間は、やはり玄関だろうということです。

こう考えると、玄関は屋内の最初の空間であることは変わりませんが、外部のものを取り入れる空間から、外部に対しての前室のような空間となりつつあると感じます。
これからもライフスタイルがさらに多様化して様々な要望が玄関には反映されていくことでしょう。
みなさんでしたら、玄関をどのように変容させたいか検討してみると、生活の利便性が向上するきっかけとなるかもしれません。

では、また。

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