生活の建築知識.7
おはようございます。
実家に帰省したときの話ですが、祖母の家の天井にネズミがいるかもしれないと母から相談を受けました。
聞けば小動物が走るような音がたまに聞こえるとのことでしたが、ネズミ駆除などしたことないのでドラッグストアなどで売っているネズミが嫌がる匂いの何かを天井裏に入れておこうと提案したところ、良いけどどうやって??と返答されました。
私はさも当たり前のように、ダウンライトがあるからそこから入れたらいいじゃん!と答えたものの、よく考えてみれば知らない方が大多数かと気が付きました。
家などを造る時・買う時・選ぶ時に壁や床を気にするタイミングはあるかもしれませんが、天井にはなかなか及ばないことが多いと思います。
しかし実は生活と密接している天井について、今回は説明していきます。
まず一般的な天井は壁と同様に、木材やLGSという軽量鉄骨で下地を組み、そこに石膏ボードを張りビニルクロスや塗装などで仕上げをしています。
下地の構成としては、まず躯体天井面から吊り木という縦方向の部材を下げます。
それの一番下部に対して横方向に野縁受けという部材を固定して、最後に野縁を野縁受けに対して直行方向に固定していきます。
躯体天井から徐々に高さを下げながら天井を構成していくわけです。
ここからわかるように天井裏には空間があり、その空間で電気配線・衛生設備配管・空調配管・ガス配管などが施されています。
特に電気設備に関しては天井面に設置することが多いので、配線ルートとして必要な空間となります。
ただ、無駄に天井高を下げる必要もなく、無理のない範囲で天井裏の空間は小さくすることが望ましいでしょう。
一方で、近年は躯体を現しにする天井を採用するケースもあります。
そうなると各種設備の配線・配管ルートも見えてきてしまいますが、それも意匠として取り入れることが前提となります。
意匠は好みによるところもありますが、躯体現しにしたときに問題になる可能性がある点を挙げると
・上階の音が響きやすくなる
・室内の温度環境が変わる
これらは必ずしも発生するというわけではありませんが、起きても不思議ではないので事前に把握はしておいた方が良いでしょう。
現代の天井は、照明をはじめ空調や感知器やスプリンクラーなど設備が集まる場となります。
これらが当たり前に設置されていることで、私たちは安心して日々の生活が送れています。
しかし古くはそのような設備は当然なく、むしろ天井は装飾の場でした。
教会や寺院の天井に絵が施されているのをどこかで一度は見たことがあるのではないでしょうか?
また、屋敷などであっても装飾をあしらうことが多々ありました。
用途や面積などにもよりますが、現行の建築法では設置を義務づけられた設備類もあり、昔のような装飾をあしらうのは容易ではありません。
神秘性や華やかさがなくなったことで、存在感すらなくしつつある天井ですが、生活を支える機能部であり、非常時に命を救う装置に変化してきたとも言えます。
そう考えると、人と建築物の付き合い方が最も反映された場所が天井なのかもしれません。
歴史的建造物を訪れる際にその天井を見て、建造物が当時果たしていた役割を考えることで、今までとは違った見方を楽しめるかもしれません。
私たちが建築物に求める役割が今後どのような形で反映されるか、興味深く観察したいと思います。
では、また。
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