生活の建築知識.32
おはようございます。
幾度か鉄筋コンクリートに関して触れる記事を出していますが、今回はピーコンに関してご説明していきます。
(生活の建築知識.6)
(生活の建築知識.21)
正確にはピーコン跡ですが、鉄筋コンクリート造の壁面に現れるドットのことです。
見出しの画像がまさにそれになります。
躯体の鉄筋コンクリート造の壁面にタイルなどの被せてしまうと隠れてしまい見えませんが、打ち放しや塗装をしただけの仕上げでは目にすることが出来ますし、コンクリート打ち放しと言えばなんとなくこれをイメージする方も少なくないのではないでしょうか。
最近では外壁サイディングやビニルクロスで打ち放し風のプリントをされているものもあり、やはりピーコン跡が施されている柄となっています。
このピーコン跡は施工上の都合で現れてしまうものなのですが、それがアイコンとして取り入れられたということです。
ピーコンとは型枠を組むときに必要な部材のことです。
鉄筋コンクリートは、組み上げた鉄筋の周囲に型枠と言われるパネルを組むことで、柱・梁・壁などの形状を造り、その中にコンクリートを流し込み固めることで完成します。
壁の型枠を組むとき、鉄筋を両側から挟むようにして型枠を並べるのですが、向かい合う型枠同士の距離感で壁厚が決まります。
というより壁厚自体は設計段階で決めているため、その決まった厚みを確保しなければいけません。
厚みを確保するために、セパレータと言われる棒を向かい合う型枠同士の間に入れます。
(現場ではセパと言われています)
セパレータの両端はオスネジになっており、そこにメスネジのついたピーコンを付けておきます。
それを型枠の間に設置するのですが、型枠→ピーコン→セパレータ→ピーコン→型枠の順に設置されることになります。
ピーコンの真裏になる型枠の外側からはボルトが通る穴を開けて、ピーコンに型枠の外側からフォームタイをさらに接続します。
フォームタイとは名前が安直ですが、型枠の形を固めるための部材です。
フォームタイを利用して同一面に並ぶ複数枚の型枠に単管パイプを跨がせるように抱き合わせ締め付けることで型枠同士がズレないようにしていきます。
さらにチェーン・パイプサポート・水平繋ぎと説明は省きますが大量の部材を使用して型枠を固定していきます。
ガチガチに固定された型枠にコンクリートを流し込み、固まって強度が出たら型枠を外していきます。
型枠を外すとセパレータはコンクリートの中ですが、ピーコンは型枠と接着していたので、埋没した状態で見えてきます。
そのピーコンを一個ずつ外して、モルタルで補修した跡がピーコン跡になります。
先にも言いましたがタイルなどを貼る場合見えてこないので、あまりピーコンの位置などは施工上の都合で決めてしまうのですが、打ち放しとなると仕上げそのものとなってしまうため、型枠を組む前に決めていきます。
もっと言うと型枠のパネル割全てを決めていきながら、露出する全てのピーコン位置も決めて型枠を組むことになりますので、なかなか大変な作業です。
皆さんが見る段階では綺麗に仕上がったものしか見えませんが、鉄筋コンクリート造の施工過程はだいぶ泥臭い作業の積み重ねとなります。
造る過程を見ている立場としては、どうしてもピーコンをアイコン化とした商品はただのお飾りにしか見えず重みが感じられません。
そもそも施工過程の跡をデザインとして取り入れるのは、それ自体がカッコいいからと言うよりはストーリーとしての面白みや素材や成果物の迫力・臨場感などを兼ね備えた上で、意匠として昇華していくことがカッコいいのだと理解しています。
これは個人的な感想ですが、なんにせよピーコン跡はそこで行われた作業の跡そのものです。
中にはあまり好みではないという方もいらっしゃると思いますが、ピーコン跡に建物の生まれる痕跡を感じてもらえれば、違った雰囲気で見ることが出来るかもしれません。
では、また。
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