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生活の建築知識.42

おはようございます。

今回は建築現場での特殊な言葉を説明していきます。
生活においては役に立たないかもしれませんが、もし工事中の現場を見る機会があり、職人が言っている意味がわかるかもしれませんし、何となく知ってる感じに思われるかもしれません。
正直仕事を始めたばっかりの頃は、何を言っているのか私自身もわかりませんでしたのでご参考になればと思います。

・いんにっさん
これは木材の断面寸法を表した呼び方で、正確には[いんにいっさん]です。
さらに言うと、[一寸二分×一寸三分]のことで、尺寸での断面寸法を略した言葉であり、この寸法の材料を[いんにっさん]と現場では言われています。
[いんにっさん] はおそらく現場の下地造作で最も多く使う木材となり、頻繁に出る単語です。
この要領で他にも木材の種類を表す言葉もあります。
いっさんいんご→一寸三分×一寸五分
いんごいっぱち→一寸五分×一寸八分
などなど。
大工工事であればよく飛び交う単語であり、瞬時にいくつの断面寸法の材料を使うか理解しています。
ちなみに[いんにっさん]は30mm×40mmの断面寸法の角材で、尺寸で考えると正確な寸法で表されていないのが厄介なのですが、とにかくこの寸法の材料のことを指しています。

・さぶろく
もう何を表しているか勘付くと思いますが、こちらも寸法を表した呼び方です。
こちらはパネル状の材料で3尺×6尺[910mm×1820mm]の寸法であることを意味します。
ベニヤや石膏ボードを利用する際に、どの大きさのものを使うかを確認するときサブロク、サンパチ、サントウ、シハチと呼んで大きさを確認します。
これも厄介なことがあり、材料の種類によってはサブロクと表記があっても900mm×1800mmであることもあります。
また逆に大きいこともあり、現場でよく使う材料以外では、サブロクと言っても正確な寸法を確認する必要があります。

・ビスを揉む
会話の流れの中ではわかりやすいのですが、ビスを打ち込むことを指しています。
これもよく現場では発せられる言葉です。
なんとなくの話ですが、何でもかんでもビスを打ち込むことを揉むとは言わず、部材同士を結合させるときに使っていると思います。
アクセサリーの金物などを取り付ける際にはあまり使いません。

・ばちる
現場では水平垂直、そして直角をこまめに確認しながら進みますが、改修などでは既存壁などとの兼ね合いで直角にならない場合があります。
そんなときに壁がばちっていると表現されます。
材料は工場で直角に作られてなっているので、調整が必要というサインとなります。

・面(つら・めん)
造作や仕上げを行うにあたって、端部や異なる材料同士をどのように納めるかが現場では非常に大切です。
面という言葉はそれを確認する際によく使われ、同面(どうづら)や面合わせ(つらあわせ)と言えば段差なくフラットに仕上げます。
面ちり(めんちり)と言えばわずかに段差をつけて切り替えることを指します。
また面取り(めんとり)と言えば、材料の角を数ミリ斜めに落として尖った部分を無くしたり、糸面(いとめん)と言えばわずかに角を落とすことを指します。

・ダメ込み
塗装を行う際。広い面はローラーで塗りますが端部や入隅部などはハケで塗り込み、それをダメ込みと呼びます。
塗装の場合、1番目が行くのが端部や隅で不備が出やすいところでもあるため、ダメが出ないようにしっかり塗り込むという意味からダメ込みと言われるそうです。

・殺す、死んでる
物騒な言葉で恐縮ですが、こちらもよく使います。
特に電気設備や衛生設備関係の内容で使用するのですが、改修などで古い既存の配線や配管が途中で切断されており、すでに使われてなく残っていることがあります。
そんな時に、配線が死んでると表現されます。
また配管系統を変更するにあたり既存の配管が入らなくなれば、配管系統を殺すと表現します。
何か命を殺生しているわけではないのでご安心ください。

・遊び
家具など決まった寸法のものを後から設置する際に、設置間口に残っているゆとりのことを指します。
全くゆとりがないと遊びがないと言い、ゆとりが多すぎると遊び過ぎや遊びが大きいと言われます。
なんならちょうど良いゆとりだと良い遊びだねぇなんて言われます。

まだまだ数えれば無数に出てきますが、職人たちの会話は不思議な単語がよく使われます。
クライアントはもちろんですが、設計者や現場管理者でも実務経験が浅いと本当に理解出来ずにコミュニケーションがなかなか取れないというケースが少なくありません。
普通の言葉で統一すれば良いではないかと思う反面、職人にとっては仕事の速さは腕の良し悪しを評価する大切な要素でもあります。
おそらくこれはどの業界でも同じではないでしょうか?
効率良くスピーディーに仕事をこなすために、短い言葉でさくさくコミュニケーションを図ることが必要となり、これらのような言葉が繰り出されるのだと思います。
職人の言葉を一度理解してしまえば、こちらとしてもすぐに何を伝えたいかがわかるため、今では自分も使っています。
たまにあまりにもわからな過ぎてもはや面白くなってくる部分も多いので、ご興味がある方は調べてみてください。
ただし、クライアントとしては何言ってるかわからないままでは不安だと思いますので、その場で聞いてもらえればきっと教えてくれるはずです。
機会があればどんなことを苦心して現場を進めているかを聞くきっかけになればと思います。

では、また。

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