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コミュナリズム:解放的代案(4)

資本主義

資本主義はヒエラルキー型経済システムであり、絶え間ない拡大・搾取・富の集中的所有を必然的に伴う。資本主義の原動力は競争市場で、市場経済の本質的目的は商品を売って利益を得ることである。商品が環境や社会全体に広範な影響を与えるかどうかに関係なく、利益は実現されねばならない。さもなくば、資本家は破産してしまう。他の企業よりも競争で優位に立つために、資本家はあらゆる社会的制約を排除し、蓄積した利益の大部分をテクノロジーに再投資して、生産力を増加させねばならない。そのことで、スケールメリットによって生産コストを低く抑えるのである。そして、共食い現象が緩やかに進み、様々な企業が失敗し、結局、成功した少数の企業に富が集中することになる。

もっと広い観点から見れば、経済全体が市場で売れる以上に多くの商品を生産すると、利益を生み出す販路が見当たらなくなり、このシステムは危機に陥る。その後、投資金が枯渇し、労働者は解雇され、ひいては、在庫の余剰商品を購入する資金すら少なくなる。この問題を緩和するために、国家は最終手段として消費者の役割を担い、経済の永続的成長を保証する。市場が課す「成長か死か」の至上命題のため、道徳的説得では経済成長を阻止できない。人間のニーズや環境への影響などお構いなしに、拡大し続けなければならない。つまり、資本主義は本来的に悪性腫瘍だと見なさねばならないのだ。資本主義は、生物圏を単純化し、破壊するまで成長し続け、あらゆる自然プロセスをテクノクラシー的に完全統制せずには生命そのものが存在できないほどになるだろう。(原註9)

さらに、資本主義の下で、人は採算性に応じて報酬を得る。経済的決定は、土地・金・機械・技術的知識を管理する個々人の手に委ねられる。当事者それぞれが、売り上げを維持するために必要なことを行わねばならない。さもなくば、破産や失業に陥ってしまう。販売という市場の至上命令のために、生活の全側面が最終的に値札に帰してしまう。このシステムは非民主的なだけでなく、凡庸化し、人間性を剥奪する。地域社会の諸関係はビジネス諸関係に還元され、その結果、社会全体の方向性が、競争・利己主義・派手な消費にしか向かなくなる。第二次世界大戦以降、資本主義は、自動車への依存・原子化した郊外区画の蔓延・ショッピングモール・大規模小売店・テレビと電子機器が提供する軽薄なエンターテイメントを通じて、孤立した個人主義を促してきた。日常生活は陳腐になり、社会的絆の発展が生み出す糧を断ち切られた退屈な人達が企業に集まる。さらに、私達は皆、生まれた時から企業の絶え間ない広告プロパガンダにさらされ、壊れたり陳腐になったりするように作られた無価値のガラクタを自分の自尊心に欠かせないものだと考えるよう仕向けられている。(原註10)

また、資本主義は都市環境にも破壊的な影響を与えている。産業資本主義勃興以前、都市は、特定可能で人間的規模の地域社会から成り立っていた。こうした特定可能な境界は都会化によって消去され、その景観と人間関係の質を粉砕するメガシティが創り出された。スプロール現象・交通渋滞・区画整理・騒音・化学物質による汚染・公共空間の欠如、これらの荒涼たる現実全てが、人々がいわれなく被っている日常的情況なのだ。都市そのものは、公選された役職者による法人企業のように管理・運営されている。そこでは、税金と公共事業の最大化が「純利益」である。人々は、近所に誰がいるか知らず、自宅外の出来事を把握できるような繋がりもない。身近な環境との直接の関わりがないからだ。確かに、情報は受け取っている。しかし、それは「ニュース」を通じてメディアが広めるもので、お互いを恐れるような考え方を導入し、社会の諸問題を誤解させ、消費を促し、パッケージ化された生活方法を売り込む。メガロポリスが拡大し続けるに従い、薬物乱用やアルコール依存症・暴力・精神疾患・低い自尊心・ストレスといった深刻な問題が全て増加し、生活に悪影響を与えているのである。(原註11)

原註9.Dowd, Doug, The Twisted Dream. 2nd ed. (Cambridge, MA: Winthrop Publishers, Inc, 1977)

原註10.The Ecology of Freedom - p.209-212

原註11.Bookchin, Murray, The Rise of Urbanization and the Decline of Citizenship (San Francisco: Sierra Book Club, 1987) - p.1-14
後に、以下のように書名を変えて復刊している:
・Urbanization without Cities (1992)
・From Urbanization to Cities (1996)

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