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「経済学の道しるべ」岩田規久男

「経済学の道しるべ」岩田規久男著・夕日書房2023年9月発行

著者は1942年生まれ、上智大学名誉教授。2013年4月~5年間日銀副総裁を務める。専門は金融論、都市経済学、リフレ派経済学者。

経済社会は民間活動からなる市場経済とそれを補完修正する国家活動から成り立つ。国家の補完修正が国民生活を豊かにするか否かを見極めることが重要と著者は言う。経済現象を正しく理解すること。そのため経済学の基礎知識が必要と、本書執筆の動機を記述する。

著者の立場は主流派経済学。著者のいう主流派とは1990年代終わりから生まれたニューケインジアン経済学を言う。ミクロ的基礎からマクロ経済学と経済主体の行動を予想し、合理的期待形成派の考えをプラスした経済学である。

本書の根底にあるものは、日銀副総裁時代のインフレ目標2%達成に対するメディア、エコノミストの批判に対する反論である。それはリフレ派理論の絶対的正しさに対する信念とも言える。

即ち、貨幣数量説に基づく金融緩和による経済成長であり、フィッシャー方程式・実質金利=名目金利ー期待インフレ率から生まれる低金利下でも期待インフレ率アップで金融緩和継続して、デフレ脱却を図るべきとの主張である。

アベノミクス失敗の主張に対して徹底的に反論する。その反論は一種の詭弁、コジツケ、屁理屈に近いものもある。理論的な納得性は乏しい。このような人物が長年、日本の金融政策を指導してきたのか?驚きを感じざるを得ない。かなり攻撃的な性格の人物である。

社会科学とりわけ経済学は数理的技術導入によって、社会現象を客観的に解明できる錯覚に陥って来た。著者も言うように絶対的に正しい経済政策も、間違いを行わない政府も存在しない。市場経済は客観性に近い存在であっても、市場の失敗も存在する。

賢人政治、絶対的理論が無いように、経済理論も現象を説明は出来ても、豊かな将来、未来の到来を確定するものではない。市場の失敗、政策の間違い、経済理論の見直し等々、検証作業を絶えず繰り返すなかで、より正しい経済理論が形成されることを知るべきである。

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