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コロナ後政府予算の不透明増大「国費解剖」

「国費解剖・知られざる政府予算の病巣」日本経済新聞社編・日経プレミア新書2023年3月発行

本書は日経新聞が2021年8月から連載した調査報道「国費解剖」の単行本化である。

膨大化する財政悪化のなか、政府予算のムダ遣いの実態、国費の「ブラックボックス」に迫り、財政規律回復の道筋を探る。

具体的内容は、9割が使途が不透明なコロナ予算、大手コンサル会社に巨額な委託料を支払う委託事業、基金という名のブラックボックス、乱発される予備費、使い勝手の良い財布・特別会計などである。

政策の費用対効果に対し、政府自身の検証もなく、納税者の代表である国会チェックもされていない。

政府、与党の選挙対策、抽象的スローガンが先行する。「規模ありき」の予算編成が毎年進む。具体的必要性を示すビジョンも明確でない。

「堤未果のショック・ドクトリン・政府のやりたい放題から身を守る方法」の本が評判である。コロナ危機、ウクライナ戦争のパンデミックから悪魔の手法・強欲資本主義のショック・ドクトリンが日本で復活しつつある。

本来、自然災害など「予測不能の予算」として計上される例外的扱いの予備費が、物価対策、コロナ対策として10兆円近く、毎年計上される異常事態。

一般予算とごちゃ混ぜになって、費用対効果、具体的使途も不明確、何でもありの国家予算となっている。

オリンピック、コロナ持続化給付金で明らかになった大手コンサルに依存する政府委託事業の実態も問題である。

電通の「一人一時間3万円」となる人件費支払の異常性。適正価格も不明、委託先の言い値での予算見積もり、一者応札で競争価格も不成立、汚職の源泉となっている。

中央官庁主導の基金の設立も問題である。現在200基金が設立されている。そこに国費が投入される。

グリーンイノベーション基金は2兆円の巨額国費が投入された。支出は企業への貸付、補助金である。運営経費も要し、資金投入効果は不透明。予算単年度主義から乖離、予算の塩漬けが続く。まさにブラックボックスである。

特別会計は各省が一般会計と区別して管理する。現在、年金、債務管理など13の特別会計がある。かつて財務大臣が特会を評して言った。「母屋ではおかゆを食べ、子供が離れですき焼きを食べる」と。

外為特別会計は政府短期証券115兆円、外貨準備高150兆円を保有する。過去「円安誘導」の結果。短期証券は借金、そして借り換えを繰り返す。

本来なら外貨を売って借金返済すべきも、実施すれば円高介入となって、できないと回答する。金利上昇で今後、短期証券の利払いは増加する。

コロナ危機で「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」が地方に交付された。2022年12月までに累計予算規模は17兆円。地方は現金給付などに活用、自由に使えた。バラマキの源泉。国と地方ともに「無責任の連鎖」である。

コロナ病床対策では、病床確保の確保料が空床ある病院、休止ある病院に無収入補完目的で支給された。支給額は2年間で2兆円。病床数積み上げが優先、稼働は二の次である。公立病院は焼け太りした。

米国は、政策目標を1年ごとに設定、検証チェックし、不備不足を修正する。英国は、政府の委託事業、工事受注に独立組織250名の専門家を配置し、費用対効果の高い業者を選ぶシステムが確立している。

日本は机上の計算で、実績だけを大々的に公表する。その成果と根拠は信頼できない。

2017年、米国の財団発表「政府支出部門の情報公開評価点数」は100点満点中、日本は5点。中国と同レベル。先進国の英国は90点、米国は85点である。

「国家予算の検証機能」と「国、地方を含めた責任体制の強化」こそ求められる。財政規律改善の第一歩はここから始めるべきだろう。


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