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「夢破れても人生」より「夢破れてからが人生」

「東京タクシードライバー」山田清機著・朝日新聞出版2014年2月発行

著者は1963年生まれ、早稲田大学政経学部卒業後、鉄鋼メーカーに就職、メーカー退職後、様々な職業を経由してフリーライターとなった人物である。

東京のタクシードライバーは全国の各地からそれぞれの事情があって最終的にタクシードライバーの仕事にたどり着いている。その特異な人生、平凡な人生それぞれを興味深い読み物にしている。

波乱万丈の人生もあれば、一歩間違えれば犯罪者になる人生もある。さらに平凡な家庭事情にもそれぞれの思いがある。読んでいる間にドンドン引きずり込まれていくのは著者の文章テクニックもあるだろう。

最後の長いあとがきで著者の人間性と人生観が明らかにされ、感動が生まれる。ノンフィクションは対象を表現するのでなく、著者の人間性をどれだけ表現できるか?それが作品の価値を決める。

13人のタクシードライバーの人生が10話で語られる。「この業界に入いたからには不合理に耐え忍ばないとダメだ」「タクシーの仕事はマニュアルでなく、心でやる仕事」「好きでこの業界に来る人は少ない。事情があって入らざるを得ない人がほとんど」などドライバーの言葉が印象的。

人は言う「夢破れても人生だ」と・・しかし真実は「夢破れてからが人生だ」ではないだろうか?

著者は言う。「人生には思い通りにならないことがたくさんある。家族と別れたり、挫折したり、人から蔑まれたり、騙されたり、金が払えなかったり、仕事をクビになったり、ノイローゼになったり、病気になったり。」

「どんなに辛くとも人は生きなければならないとは思わない。生きていさえすれば良いことがあるとも思わない。最初から最後まで、辛いことばかりの人生もある。」

「しかし誰にも死は確実に到来する。人間はいずれ確実に死ぬのに、なぜ、生まれなくてはならないのか?」この不条理・・著者はいう。「不条理も決して悪いことではない」と・・

答えは誰も判らない。それが人生であり、それが人間だからだろう。だからこそ人の人生は平凡でも、波乱万丈でも奥深い。だからこそどんな人生も大切なのだ。

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