夢を見た。
私は明るい家のなかにいて、叔父が玄関の扉の外にいる。
そばにはだれか知らない人が一緒にいた。
外は真っ暗闇。
この叔父と父は犬猿の仲だったと聞いている。
父の葬儀にもいろいろと理由をつけて夫婦そろってこなかった。
だから私はこの叔父夫婦については、父亡きあとは「知らない人たち」に
入れてしまっていた。
なのに、なぜか叔父の夢を生まれてはじめて見たのだった。

夢は続く。
私は大切にサンドイッチのケースに残していた大好きな
ベーコンエッグサンドを3つ、この突然の訪問者に渡すことにした。
そして、一度は家に入り、机の上に瑞々しい葡萄があるのに気づき
慌てて外にいる叔父に渡したサンドイッチケースのなかに
もぎとった葡萄の枝を入れた。
よく見ると、家のなかでは瑞々しかった葡萄がケースのなかで萎びていた。
叔父は、若返っていて、少し微笑んで見知らぬ人とどこかへ行こうとした。

ただそれだけの夢だった。
叔父の連れ合いは、2か月ほど前に他界していた。こどもはいない。
叔父の家の近くの親戚に電話をかけて、
叔父の安否を確認してほっとしている私。
私は幼いころから叔父からほかの従兄たちとは明らかに区別して取り扱われた。
愛情のかけらも感じたことはなかった。
私の大切なサンドイッチは、その叔父への最後の憐みだったのだろうか。
瑞々しかった葡萄が叔父の手に渡ると萎れてしまったのは
幼いころから愛されなかった私の気持ちだったのだろうか。

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