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べちょべちょなチロルチョコ
「このクラブのために全力でプレーします!」
気づいたら市民ホールの
ような場所で今シーズンの抱負を
なんでも自分はできるんだという
高揚感に包まれながら力強く話していた。
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新体制発表会だ。
ファン・サポーターの前で
クラブの社長から強化部長、監督
選手などが今年の方針、そして
抱負を語る。
チームが一つになる
すごく大事な会。
中学生の合唱コンクール以来の
大勢の前でのステージだったが、
緊張より自分が本当にプロサッカー選手
になったんだという実感が強く
嬉しさを噛み締めていた。
新体制発表会が終わった後も
snsなどでたくさんのDMと
メッセージが来ていた。
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こんなにも自分に期待してもらい、
応援してもらいこんなに素晴らしい
職業はそうあるものではないと
思ったし、全てをかけてこの人たちに
結果を出さなければならないと心に誓った。
そして人生初めてのシーズンが始まる。
今までのアマチュアの世界とは違い、
結果が全ての世界。
勝てば讃えられ、負ければ罵られる。
1試合、1試合がこんなにも大事なのかと
身をもって感じていた。
選手として1年目。
もちろんそう簡単には出させてもらえない。
僕はJ2からのスタートだったが、
今まで何年もプレーしてきたベテランの選手や
J1で結果を残してきた選手も当たり前のように
所属している。
試合に出られたとしても、メンバーに入ること
自体が久しぶりで試合感が薄れており、
自分のプレーが出せないことも多々あった。
それがベンチやバックアップメンバーの
難しさでもある。
大卒で即戦力で取ってもらってるとはいえ、
結界的になかなか出られない状況が続いていた。
もちろん、僕自身も人間だ。
お酒や女など遊びに走りたくもなり、
そういう時期もあった。
![](https://assets.st-note.com/img/1686306334412-zcixFL6WFM.png?width=1200)
もちろんそれが自分にとってのプラスとなり、
サッカーにより一層打ち込めるメンタルを
整えるためのツールとなりうれば問題ない。
しかし僕に取っては罪悪感と、
コンディションが悪くなる一方であった。
でもそんな僕を見捨ててない小さな
サポーターが人生を変えてくれた。
いつものように練習場に行き、
トレーニングをしてクラブハウスに戻る。
いつもと変わらない日常と違ったのは
今日は練習公開日だった。
ファンやサポーターが練習を見にきてくれ、
練習後に選手はサインなどのファン対応がある。
![](https://assets.st-note.com/img/1686306348342-8NWs3Bv0f7.png?width=1200)
多くの方が来てくださり、サインを求められ、
一言声をかけてくださるこの小さい
イベントは僕にとっては有り難かった。
そんなファン対応を終えて、クラブハウスに
戻ろうとしていたとき、1人の少年が
駆け寄ってきた。
クラブの小さい練習着を着ており、
スパイクと水筒、タオルを持って
早く練習したいと言わんばかりの
格好だった。
でもそんな格好でこんなことを言ってきた。
「〇〇選手、サイン服に書いて!
俺、ファンなんだよ!〇〇選手のプレー好き!
最近出てないから寂しいよ!頑張って出てよ!」
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新人のあるあるが、イケメンとか
とても下部組織出身の選手でない限り
なかなか自分だけのファンというのは少ない。
チームで活躍している選手や
アイドルのような存在の選手のファンが
ほとんどである。
それは大人だけでなく子供も同じ。
そんな中、僕のファンだと言って
駆け寄ってくれた小さな少年に僕は
なんで僕なんだろうと正直少し疑問を抱いていた。
そしてその少年はおそらく30分〜1時間ほど
強く握りしめていたべちょべちょの
チロルチョコを話しかけてくれたと
同時に渡してきた。
僕はこのチロルチョコを今でも忘れられない。
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こんな小さな子供がキラキラとした
目でこちらを見て、活躍してほしいと
食べたかったであろうチロルチョコを
渡してきた。
なんで僕はこんなところでくすぶっているのか。
悩んでいる暇はない。
どんな状況であろうとこうやって応援してくれる
人がいる、応援される立場にいる以上、
毎日を大切にクラブのため、そして
自分自身のために過ごしていかなければ
ならないと強く思った。
無論、その子供以外のファン・サポーター
が嬉しくないということでは全くない。
すごく嬉しかった。
でも純粋無垢な子供の言葉と
チロルチョコはすんと自分の身体に
染み渡るように入ってきた。
![](https://assets.st-note.com/img/1686306384543-qIYBBSIdMs.png?width=1200)
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物語のような感じでノンフィクション話を
書かせていただきました。
今回も読んでいただきありがとうございました。
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