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抽象画には実は設計図があるというお話(着色篇)

【 簡単なレクチャー 】抽象画のスケッチを描き始めて着色の段階に到達した時、何が大切でどのようにすすめるのが良いか、具体的な実例を参考にご紹介します。

前回の記事をご参考頂き、白紙の状態から何を描くか、またその描き方を御確認ください。躯体となるデッサンが終わったらいよいよ着色の工程にすすみます。


下地スケッチに依存する

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作品の躯体となるスケッチに、ある程度忠実に色を加えた際の実例です。直線的な線に対して色でシェイプを描くことで、更に別の空間が生まれてきます。その新しい場所に更に色を乗せてゆき、もしくは消してゆき、コンポジション(場所取り)を統制してゆきます。

作品への配色は個人の好みに依存しますが、対照色だけはしっかりと把握しておきましょう。

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わたしは作風やコンセプトによって配色域を決めます。オレンジ系であれば右側の色を中心に使い、青系の作品であれば左側の色を使います。

「色彩豊か」という表現は「様々な色が組み合わさって綺麗な様」を創造しがちですが、わたしの解釈は「必要な色を必要な量だけ使い最大限に効果を見いだす」ことが大切であると考えています。

ですので、対色を織り交ぜないように注意して、作品の色としての統一性を図ることを重視しています。
例:オレンジと青、黄色と紫、赤と緑

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こちらは対色を使いすぎずに同系色で統制した作品例です。青・グレー・黒など数種類の色しか採用していません。様々な色が入ると一瞬の見栄えは良くても、イマイチしっくり来ない瞬間が訪れることが多々あるので、数種類の配色だけで納めるようにしています。


下地スケッチからはみ出る

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次に、作品の躯体となるスケッチから、あえてはみ出て配色した実例をご紹介します。スケッチ自体は中央にまとまっていたのですが、前項の「スケッチに依存する」を重ねるうちに、キャンバスの外へはみ出したり、スケッチを無視し、現象の繰り返しを行うことで完成へ導く手法です。

意図せずに起こりえる「完成への経過」を更なるスタートとして描き重ねることで、ある意味、理想的な完成図をねじ曲げ新たエレメントを誕生させるというプロセスです。

設計通りではないのですが、このプロセスが抽象画の愉しいところであると思います。念密に組んだ工程図(設計図)と平行して、何か新しい価値に遭遇できるので、わたしは好んでこの「はみ出る」瞬間があれば採用します。
以下の作品も下地スケッチから離れていった作風です。

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設計図は万能、偶然はもっと万能

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スケッチを始める前から一度考案した設計図はとても万能です。その理由は、描き始めた絵に併せて色をのせて描くことで、ある程度の予想した着地地点が見えるからです。具象的絵画の描き方に類似した工程です。

それとは相反して、描きながら偶然発生した現象をもとに、更なる設計を加えながら描くことも、自由に描くという側面からみると、こちらも万能です。それは当初の設計を越えてゆき、更なる図面と共に挑戦してゆくことができるからです。

抽象画を描くとき、一程度の自由な構図を保つことが必要になります。それはスケッチの時点から躯体として構造化されてゆき、着色が始まると更に厳密にその構図に沿って制作する必要があります。

決して自由な手法、とだけの認識はせずに、各々の創り上げた法則に従って描ききることが大切です。皆さんも是非挑戦して取り組んでみてください。

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