SIGMA Iシリーズで撮る映像
先月、YouTubeにバルトーク(1881-1945)作曲「フーガ」の映像を公開した。
この映像はLUMIXのSシリーズカメラ3台、SIGMAのIシリーズレンズ3本で撮影した。今回は映像製作者の"眼"であるレンズ、SIGMA Iシリーズについて自分が感じている魅力と使用感を書いてみる。
撮影機材
まずは使用した撮影機材について。3台のカメラとレンズ、4本のマイク、2灯の照明で撮影・録音。
採用テイクを1本撮ってからその音源に被せて再び撮影。(90mm F2.8を使用)これで4アングルの映像となる。
照明はキーライトに150WのLED+ソフトボックスを使用。反対側に小さなLEDを置いて落ち込んだ暗部の輪郭を少し起こす。
カメラ/レンズ
・LUMIX DC-S1H/SIGMA 90mm F2.8 DG DN
・LUMIX DC-S1/SIGMA 45mm F2.8 DG DN
・LUMIX DC-S5/SIGMA 24mm F3.5 DG DN
マイク
・Shure KSM141 SL Stereo
・LEWITT LCT340×2(omniカプセル使用)
レコーダー
・ZOOM L12
照明
・GODOX VL150
・Neewer softbox 90cm
・Pixel LED Light
三脚
・Manfrotto MVK500AM
・Libec TH-Z
スタンド
・K&M 21430(俯瞰カメラ用)
・K&M 26010B
・Gravity GTMS4321B
SIGMA Iシリーズの魅力
SIGMA Iシリーズのコンセプトムービー2020(90秒)がかっこいい。2021年12月現在、個性的な6本(ソニーEマウント用、ライカLマウント用)がリリースされている。
Iシリーズについて自分が感じた魅力は以下の4つ。
1.高い解像力と情緒のある写り
2.軽量コンパクト
3.統一されたトーンとコントラスト
4.高いビルドクオリティ
1.高い解像力と情緒のある写り
これはSIGMAレンズ全般に言えることでもあるけれど、ピント部分におけるシャープさ、細部までクリアに描き切る高い解像力にはただただ感心するしかない。
しかし、ただシャープなだけではない。場の空気が立体的に描かれている。やや翳りのあるその描写に情緒を感じる。
2.軽量コンパクト
光学性能を追求した同社のArtラインに比べて、Iシリーズは軽量コンパクトなのが良い。大きく重たいレンズは日常的に使うのは不向きだから。
Iシリーズ/Artラインの重さ比較例
35mm F2(325g)/35mm F1.4 Art(645g)
90mm F2.8(295g)/85mm F1.4 Art(630g)
3.統一されたトーンとコントラスト
各レンズとも色味とコントラストがきっちり統一されているから、複数を混在させて撮影しても色合わせがしやすい。編集の時間を大幅にカットできる。
4.高いビルドクオリティ
コンパクトなのに手に取るとずっしりくる質感、細部まで精密に削り出されたオールメタルのボディ、つい回したくなる絞りリングのクリック感。
シグマの山木社長が「正直、やり過ぎました。」と言ったのも頷ける高いビルドクオリティ。シンプルにモノとして素晴らしい。そんなIシリーズは「2021年度グッドデザイン・ベスト100」に選ばれた。
SIGMA Iシリーズ3本を使ってみて
以下は今回使用した各レンズの所感。
90mm F2.8 DG DN
右横からのメインアングルに使用。90mmという焦点距離であることを疑うコンパクトさ。そのサイズからはちょっと想像できない光学性能を持つ。今回選んだ3つの中では最もシャープな描写。
45mm F2.8 DG DN
マリンバの右後方に設置。開放F値ではややソフトな写り。ボケの美しさは独特。Super35mmクロップモードで使用して周辺の流れをカット。映像では登場が少ないものの、印象に残るアングルになっていると思う。
24mm F3.5 DG DN
俯瞰アングルで使用。このレンズの周辺光量落ちは、今回は演出として効果を発揮した。最初にフッテージを4Kモニターで確認した時、鍵盤の木目が精細に描かれていて驚いた。
紹介した3本以外のIシリーズ
ズームと単焦点の使い分け
普段の撮影では、LUMIXのSシリーズ(ズームレンズ)とSIGMAのIシリーズ(単焦点レンズ)を使い分けている。
ズームレンズを使うとき
演奏会や発表会、撮影スペースに制限がある場合はズームレンズが圧倒的に使いやすい。画角を決める際、セッティングにあまり手間取らない。画質は標準的になるけれど、短い準備時間で確実に撮影を行いたい場合は迷わずズームを選択する。
単焦点レンズを使う時
MV撮影や機材の設置場所に融通が効く場合は単焦点レンズの使用頻度が高い。ズームと比べてセッティングに手間はかかるものの、画質面で大きなアドバンテージを得られる。
上の映像は別の日に同じ会場でLUMIXのズームレンズで撮影したもの。同条件ではないので厳密な比較はできないけれど、Iシリーズとの違いがよくわかる。
終わりに
Iシリーズは大切な道具としてずっとそばに置いておきたい。そういう愛着が湧いてくるレンズだ。写りの良さはもちろんのこと、モノとしての質感の高さに依るところも大きい。これからも何気ない日常から特別な瞬間までを捉える自分の"眼"となってくれるだろう。
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