そして僕は、南米を発つ。
サンティアゴ空港で寝転がっている。
この空港は、おしゃれな音楽が流れてくる。
いまのBGMは、 Ed Sheeran の Photograph。
“Wait for me to come home”
という歌詞が、なんだか染みる。
現地時間は夜の22時だ。
あと1時間後に、僕は南米を発つ。アメリカへと飛ぶ。彼女はもう、ロサンゼルスに着いている頃だ。もろもろの事情で別の便になっている。
僕が着くのを待っててね、という思いとともに、この南米の旅を思い返していた。
思えば、1か月いたらしい
45日しかない世界一周。
そのうちの30日を南米で過ごしていた。
正直、まだまだ足りない。南米はとてもとても広く、見切れていないし、心で感じ足りない。
なんといってもパタゴニアに入ってからは、夢が叶ったようで、一瞬一瞬が本当に幸せだった。
圧倒的な大自然と、それを愛する人たちに囲まれた旅は、自分の原体験をまさに形作ってくれているようで、一生忘れない体験となった。
Wルートトレッキングを終えてからは、今日の宿すら分からない、"ランダム"な旅。
自分の好きや、やりたいのコンパスの進む方向へと道をひらく毎日が、自由で自分らしく、夢のような時間だった。
世界遺産のラクガキの街や、ワインと美食の街でのカーニバルにサッカー観戦。
アートや食、そして現地の人との幸せの共有が、旅と人の不思議な出会いの縁をより深く感じさせてくれた。
大切な人たちと
彼女が日本から、2日以上かけてボリビアまで来てくれてからは、楽しさが2倍になった。
普通の買い物が、食事が、眠る時が、すべての価値観の共有が、ふたりの思い出になっていく感覚が、なにより幸せだ。
もちろん、ウユニ塩湖の世界一の絶景をふたりで見れたことは、一生忘れない宝物だ。
ラパスの夜景は世界一だと思ったし、けんちゃん食堂のかつ丼は涙が出るほど美味かった。
タクシーの運ちゃんとは毎回写真を撮るようにしているし、南米には野良犬が多く、ウユニの犬は甘え上手だ。
ボリビアのスクレでは、最高の友達との再会をした。彼は日本の裏側で、青年海外協力隊として活動している。歩けば現地の人に声をかけられる、街の人気者になっていた。活動の傍ら、ボリビアのプロサッカーチームのエースもつとめていて、相変わらずのまっすぐさに尊敬が止まらない。
そんなかっこいい男と、トラックの荷台で、夜の世界遺産の街を駆け抜けた。
きっとこれが青春なんだろうし、旅なんだろうし、こんなことをできる仲間や恋人がいる幸せが、なにより幸せだった。
そして、彼の教えてるサッカーチームの子供たちに混ざって試合をしたのも、忘れられないなぁ。お茶目で、いたずらっ子で、世界中変わらない子供は、サッカーが大好きなんだ。
南米が大好きになった
たくさん虫にも刺されて、本当に苦労した。
スペイン語の壁にもなんとか立ち向かって、結局難しかったけど、言語の面白さを改めて知った。
治安が悪いと言われているけど、気を付けてはいたけど、気を張るような怖さもなく、むしろたくさんの親切ばかりで、素晴らしい人たちしかいないなと思った。
まだまだ、全然足りない。
旅をすればするほど、旅をしたくなる。明日が来れば、また新しい出会いがきっとある。旅に終わりなんてない。
それでも、まだ見ぬ出会いに期待もしつつ、今までの出会いの幸せを持って、次の大陸に渡るのも悪くない。あれこれと見つけようと進まず、あるもの、出会ったことを大切にする。そんな旅でいいなと、いまなら思う。
さて、ゲートを通り目を閉じていたら、はじめてのアメリカだ。広く長い道を、浜田省吾のAMERICAを聴きながらドライブするつもりだ。大きなアメ車を、思う存分乗り回して、バカでかいハンバーガーを食らうのだ。
自由の国の夢を求めて、自分の旅を彩った南米を去る。
そして世界一周の旅はもうすぐ、終わる。
パッキングが得意というかスキです。