見出し画像

【a-137】妖琦庵夜話 榎田ユウリ 著 読書メモ

オーディブル。

DNA鑑定ができるようになり、ひょんなことから人の中に人ではない遺伝子の生物が存在することが判明した。
それは妖人。いわゆる妖怪として伝承される特殊な能力を持つ存在の特徴を有した人と見た目がそっくりな人々。かつてはたくさん存在し、現代では減ったと言われている。そして、親が妖人でも子供が妖人になるかはわからない。
妖人と人間は生殖できるため、種としては人間なのだろう。
妖人と判定されると人としての権利が失われてしまう。そのため自分が妖人かもしれないとあえて判定しない人々がいるため、強い差別は起きていない微妙な世間の雰囲気。

妖人は存在するが妖怪は存在しない。
妖怪は人口に膾炙した不可思議な現象そのものとのこと。

この物語の主人公は、警視庁の妖人対策本部、略してY対に志願して配属された新人の脇坂くん。姉4人を持ち、強力な女子力を培い、打たれ強く人の懐に簡単に入り込めるコミュ力の塊のような人物。
そして、Y対の上司たる鱗田さん、うろさんは昔ながらの老獪な刑事。
うろさんがお世話になり、Y対に捜査協力してくれる先生がもう1人の主人公、洗足伊織。茶道の先生だが、相手のことを見透かせる?力の強い妖人であり、その能力を母から受け継いだが、その能力に必要な目を縫い付けてしまっている。
妖人への造詣の深さは世界一であり、この人の知識なしでは妖人にまつわる捜査が出来ない。そんな関係。
彼が住む家にある茶室がタイトルの妖琦庵。
一緒に住むのが戎芳彦と弟子丸豆。よしひこさんは菅狐、まめくんは小豆とぎの妖人で先生の身の回りの世話をしている。

そんな関係の人々で、世間で妖人の仕業とされる事件を解決していく。

今作では、ガリガリに痩せた女性が山中で転落死した状態で見つかった。
その犯人が脂取りという妖人の仕業だと噂された。結果的には痩せることに病的に執着した母親に洗脳された普通の人間のマザコン発揮の事件だった。
現代女性の異常な痩せへの執着と、人に勝りたいという自己中心的な歪んだ承認欲求が垣間見えたストーリーだった。

ストーリーで出てくる各登場人物が良い人々で楽しい本だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?