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五台山清涼寺 陳舜臣 著 読書メモ

久しぶりの陳舜臣さん。
古い時代から歴史的には脇役となる人々にフォーカスを当てた短編集。間に陳舜臣さんの旅行記が含まれる。

三国時代の呉の銅鏡職人たちの倭国への移住の話など古いものもあったが、清代のところ、実質初代でヌルハチの孫であり、康熙帝の父の順治帝の譲位の噂の話と太平天国の乱の話が面白かった。

順治帝は、浅田次郎さんの蒼穹の昴シリーズで描かれていた、満州文化で育って漢族を支配する悩みを抱えて漢字を勉強した拙い書画を飾り、それが受け継がれたというエピソードが印象的。
歴代の王朝が後継者争いで国力を低下させたことを、皇帝が健在な内に誰にも中身を教えずに後継指名をこの書画の裏面に入れておく方式にしたことで改善したのが地味に凄いと思っている(フィクションと史実の境界を私がこの辺は理解してないが)。
彼の跡をついだ康熙帝は中国皇帝史上、トップと言われる名君なので、その土台を作ったのも凄い。

太平天国の乱の曾国藩への私兵の信頼が恐るべきスパイ活動を展開させたエピソードだけど、これも面白かった。曾国藩自体はあまり軍事の才能が無かったらしいけど、彼が作った淮軍が後の北洋軍閥となって李鴻章が最後の清を支えることになるのも皮肉。
割と、太平天国の乱は北宋の法臘の乱に似てると思ってて、やはり北部に意識の向いている政権にとって、かつての楚の地域は反乱の起きやすい場所なんだろうなと思う。中国は定期的に群雄割拠するので、次の火種も実はあの辺で既に生まれてるのかもなとも思う。

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