見出し画像

秘本三国志(五) 陳舜臣 著 読書メモ

続き。
前回まではのんびり進んでたのでシリーズが赤壁後くらいで終わるかと思っていたら、この巻の冒頭でサラッと赤壁は終わった。
考えてみれば、大した資料もあまり残ってないらしい戦いだし、結果の影響も大したことないのでそんなもんかと納得した。
演義で殊更に描かれるのは朱元璋の軍師劉基の水戦を題材に膨らましてあるからというのは有名だけど、自分もそれに囚われてたなと。

周瑜もあっさり死んでしまうし、その後疫病の流行でたくさん人が死ぬのもなんとも物悲しい時代だなと思わせる。
曹操や劉備が長生きしたのがやはり何よりも国を安定させる武器だというのは伝わる。結局統一する晋を建てる司馬一族の司馬懿も高齢になるまで生きていてボケたふりまでしたのが功を奏した訳だし。
中国が初めて統一できたのは秦が、過去の過ちから学び、商鞅の時代から法律で愚かな人の本性を抑えたことで、秦公が代替わりすることで勢力がリセットされることを抑えた。英傑といえる昭襄王の積み重ねを二代ボンクラで時間は浪費したが、始皇帝に引き継ぐことが出来た結果中国統一が達成された。
それまでの春秋戦国時代は、斉の桓公やら晋の文公やら秦の穆公やら楚の荘王やら超絶有能な支配者が登場しても、すぐ次世代で貯金が無くなってしまっていた。
長い間安定して政権が続くことこそ、支配側も住民側も望んでいるということがわかる。
今の時代は誰がやっても政治なんて変わらないって投票権まで持ってても投票しないんだから、よく出来たシステムにあぐらを掻いてるんだなぁというのがよくわかるし、長生きしなきゃという切実なペインも存在しなくなったんだなと思った。

今回改めて三国志読んでいて、天下三分の計ってなんか納得させられてたけど、全然良くなくない?って思ってしまった。特に三国時代の三分割の領域の分け方って他の戦国時代と比べてもバランスが圧倒的に悪いと思った。

戦力が拮抗することで国民が安定して暮らせる的なことを孔明は言うけれど、それって本当か?と。
まず、常に国境警備を厳重にやらなければならないから徴兵は厳しくなるし、人々の移動も制限される可能性あるし、秘密警察みたいなものやスパイ合戦で枕高くして寝られないんじゃないだろうか?と思った。

他の戦国時代との比較で言うと、大体中国の分け方は春秋戦国時代の末の秦、楚、その他の国の三つのエリアで分けられるイメージがある。
氐族の苻堅が前秦を作った時も、東晋が楚、鮮卑族がその他の国のエリア。
そして巴蜀は大体フリーエリアで取り合いになりがち。なので巴蜀が本拠地はめちゃくちゃ謎。
ちょっとエリアのスケールが違うかもだけど、南宋、金、西夏(モンゴル)も近い気がする。

こう思うと、もう最初から魏と呉の2国体制の方が中国本来の黄河文明と長江文明に分けられて素直だと思った。強国に対し緩衝材が欲しいという魯粛の考えも地政学的には良くある話だけど、当時の背景考えた時には何を悠長なと思うと思う。自分の領土になるところを人に与えて緩衝材にするのは国力落として相手(曹操)が成長するのを、待ってるに等しいと思った。

この巻で関羽が打ち取られたけど、やはり関羽は曹操嫌いの中国人感情に影響されて祭り上げられただけで、ただの、モラハラパワハラの乱暴者だったということが非常に良かった。
死に方から考えても聖人なわけないんだよなぁと。
逆に曹操は本当にバランス良く統治も政治も軍事も後継者関係も学問も出来ててすごい人物だなと思う。

さて、次が最終巻。おそらく曹操が死んだことになってスタートし、当然最初に劉備御乱心からの張飛の死があって、劉備も死んでとバタバタと行くことを思うと五丈原とかもはやどうでも良いなと。
八王の乱まで考えれば誰が覇者になろうと関係ないし。やっぱり官渡の戦いこそクライマックスだなと思う。
惰性で読むつもり。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?