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桃源郷 上下 陳舜臣 著 読書メモ

久しぶりの陳舜臣先生。というか、もう本は増えないので読むことも少ないのかな。

下巻

久しぶりに図書館使い出したら楽しすぎて目についたものを借りてしまった。
やはり読む時間取りにくいので、次からは少し欲望は抑え気味にしよう。

舞台は宋末の水滸伝や法臘の乱の頃の燕京から。耶律大石の命を受けて陶羽は世界を見に出かける。これが隠れマニ教徒の一族であり、徐々に旅で自覚的になっていく。
この一族の中で語り継がれる桃源郷の物語りを、信じて冒険をする。

時代として法臘はマニ教徒として喫菜事魔と呼ばれて組織的な反乱活動を江南の地で起こす。
当然、世は徽宗という中国屈指のダメ皇帝の元、様々な贅沢のために税を搾り取られていた。
徽宗と万暦帝はすごいと思う。後世に残した宝は計り知れない。青磁や白磁はマジで綺麗で欲しい。。

燕京という舞台は遼の冬の間の首都になる街。
契丹族。キャセイパシフィックのキャセイが契丹。
宋の建国前の五代十国時代に既に遼に取られていたいわゆる燕雲十六州。その領域には漢人が多く住むが、この後遼を駆逐する金にも取られ続ける。
耶律大石は、遼の滅亡の際に西に逃れて後継国家を作った皇族。楊令伝のこの辺りの描写はカッコ良い。

西方へ向かって着くのはセルジューク朝。
なんと、ルバイヤートのウマルハイヤームが同時代だとは思わなかった。宰相ニザームとアサシンの語源となった先鋭化した狂信者集団をまとめるハッサン。
ラジオドラマで聴いたことのある面々だった。
マニ教徒という設定には驚いたけど。
元々麻薬とかってゾロアスター教で使ってたという話だったと思ったけど、そのハッシーシからアサシンになったんじゃなかったっけ??

確かマニ教ってゾロアスター教からの変化だったような記憶。二元論的な世界観だったはず。
アフラマズダは出てくるのかしら。

出てきた街の中でもイスファハーンは行ってみたい。また、陳舜臣先生もガッカリしてると思うけど、ダマスカスやアレッポはISISや内戦でやられてしまった。バグダッドもダメだろう。
エルサレムもまた戦争してるし。

なんか十字軍の遠征なんか見てても、結局キリスト教が1番人殺してるよなって思っちゃう。

世界が平和なことなんて歴史上あり得ないんだなとつくづく思った。
この激動の後にテムジンが駆け抜けていくのはまた歴史の面白い所。
全てがひっくり返される。

今回の隠れマニ教徒という話と幻術師が出てくる感じは松本清張を思い出させた。
ペルシャの地は麻薬の発祥地で曹操の医師の伽陀も一説では麻薬を用いて麻酔をし、外科手術を行っていたなんて話もあり、ペルシャ人だったのでは?なんて言われてたり。

この話のテーマである、真の信仰というのは何なのかあまりよくわからなかったけど、兎に角、人に押し付けるものじゃなく自分のために信仰はあると言いたいんだろなと思った。

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