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秘本三国志(六) 陳舜臣 著 読書メモ

続きの最終巻。
通して読んで全体感としては、やはり三国志の要点は官渡の戦いまでだなと言うこと。後の方は少容と著者に名付けられたこの物語の観測者が一気に歳をとることになった。ある意味天下三分の計によって平和が多少は実現していたのかもしれない。あくまで緊張状態の均衡だが。
当初読んでいて、このペースで行くと、赤壁くらいで6巻終わってしまうぞと思っていたが、小覇王の死くらいから一気に駆け足になった。
それ以降は全て小競り合いだったと捉えて良いのだと思う。
となると、三国志って三国になる前が主幕で後はエピローグなんだなと。

諸葛孔明が優秀な傑物だったことは疑う余地はないが、かつての諸子百家のように立身出世を狙っていたために劉備についたんだろう。
でなければ、普通に荀彧の後釜になれ、世の中に平安を作れた可能性が1番高い。
やはり、三国志に出てくる人物で本当に世の人のことを考えていた人物は曹操陣営に多かったと思わざるを得ない。そんなふうに思わせてくれた良い本だった。さすが陳舜臣先生。

それにしても、後書きを読んでいてふと気づいた(常識かもしれないが)ことで、中華統一王朝は大抵踏み台とする短命の統一王朝が存在している
漢の前の秦、西晋の前の魏(晋も短命だが原因は内部分裂)、唐に対する隋、宋に対する北周。北宋以降は国の瓦解の仕方が群雄割拠をあまり許さなかったから、分裂統一の流れを長らく取れなかった。朱元璋はそう思うと特殊な気がするが、1代で終わる戦乱だったので元を引き継いだと言えるのかも。清は明の地位をそっくり上書きした感じで統一という感じではない(呉三桂とかはいたが)
そして中国共産党に対する国民党で復活しているように思う。
急激な統一には反発が起こり世代が変わることで当たり前となり馴染むのだろうと考えるが、その踏み台となる犠牲が必ず必要なのだろう。

三国時代自体は個人的にはそこまで面白くないと思っていて、呂布と曹操と荀彧、夏侯惇あたりが個人的な好みであるだけ。
そして曹操が劉氏の王朝にとどめを刺した歴史的意味の大きさや、孫子注釈本を残したことなど実績の大きさは随一だと思う。
曹操にこそ蕭何役となれる孔明、そして陳平役となれる時代の策士が必要だったのだろうと思った。その準備が整って死を迎えれば、優秀だが脇の甘い子孫の判断でなく、忠誠心の強い功臣に王朝を守ってもらえたんじゃないだろうか。

たらればを考えるのは楽しいので無限に続くから、この辺で。

また中国史小説を読みたいけど次は何になるかな?

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