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飛鳥の風 持統女帝 吉田知子 著 読書メモ

久しぶりに日本古代の小説。
ジャケ買いした本。

持統天皇と言えば、百人一首の第1首で有名。
春すぎて〜の爽やかなイメージは結構好き。

これまで、周辺の人物の主観視点小説などは様々読んできたが、持統天皇視点は初めてだった。

この時期は日本の大きな転換点であり、興味深い事件の目白押し。これを追体験出来るのは楽しすぎた。

持統天皇は父か天智天皇(中大兄皇子)、母が蘇我石川麻呂の娘。夫は天武天皇(大海人皇子)。叔父と姪の結婚と、そりゃ草壁皇子だの身体弱くなるにきまってるわと。血が濃すぎる。
当時は皇女の母を持つ皇子が皇位継承権を持ってたようで、必然的に継承権の低い人物の方が正常になりやすいんではなかろうか。

丁未の乱にて物部守屋か蘇我馬子に敗れ、物部氏が政治の首座から落ちると蘇我氏の天下となった。馬子と厩戸王で唐の文化を取り入れて日本を文明化していく。
しかし、蘇我氏の外戚を超えて天皇を飾りにしかねない勢いに蝦夷と入鹿を中大兄皇子らが誅殺してしまうのが乙巳の変。
それまでは、豪族連合の名誉首座のような位置だった天皇家は、自分達で政治を行うことに。あわせて豪族間の勢力争いだったものが、皇族間の勢力争いに置き換わってしまう。
中華王朝では、大抵初期がこういう皇族間の権力争いで、そのあと外戚やら官僚、宦官の権力争いになるイメージなので、日本はこの乙巳の変にて政治体制をリセットしたイメージなのかと思う。

そして、朝鮮半島での勢力争いで白村江の戦いが起こり国家事業として筑紫に首都を移転して戦うも惨敗。
必死に新しい国づくりに励むことに。
この時、万を数える兵を半島に送り込んでるのに、丁未の乱や壬申の乱の時の動員兵力が2桁落ちるのはどういうことなんだ?と結構疑問。

皇極天皇は可哀想だと毎回思う。この陰湿な殺し合いの責任を1人で背負ってる感じが。。
壬申の乱も持統天皇からすれば異母兄と夫(叔父)の殺し合い。どうなってんの。。
やってることが春秋時代の斉みたい。。

藤原不比等が出てきて、蘇我氏の独占権だった皇后になれる外戚の権利を獲得し、この後からまた豪族の勢力争いに戻っていくことになるんだなぁと思った。まさに持統天皇の生きてる間だけの天皇の政治だったと。
藤原四兄弟によって長屋王が殺されてしまうのもこの後だし。
これから、橘奈良麻呂の乱や恵美押勝の乱やら道教の乱やら豪族の権力争いが激化する面白い時代になる。高橋克彦さんの小説で面白かった。

こう思うと誰と誰がバチバチの権力争いをしているかで、その時の実際の為政者がハッキリするんだなと思った。

藤原京って藤原不比等の名前でもついてんのかと思ってたけど、藤の原だったのねと意外だったのも面白かった。確か、水捌けが悪いんだか排泄物の処理が悪かったんだかで使いにくくて早々に放棄されてすぐに遷都されるだったと思うが。

最後に、今回の持統天皇周りの血縁の表し方を見ていてふと思ったのだが、これだけ近親婚やら重婚が多発してると一見すると関係性が意味不明な人物が出てくる。
古代中国の記録が散逸して、整合が取れなかったり実在があやしかったり、そして、関係性が変な人物が居たりするが、今回に近い可能性があったりするんじゃないだろうか?
今じゃ考えたくないけど、父親と娘が結婚して子供作ったら、孫であり息子だったり。。
こういうのも昔の常識ではあり得たんだろうから、意識し直して見るのも面白いかも。

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