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小説

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幻の花火

ここ最近の記憶が全てぼやけている。
9月初旬、快晴の昼下がり。
クーラーの効いた部屋でぼーっとしていると外の気候は掴めないが、近くのコンビニまでなら歩けるだろうと意を決して玄関のドアを開けマンションの外に出た。
もう長袖でもちょうどいいと思っていたが、まだまだ夏の暑さが街に腰を下ろしていた。
周りの人たちはまだ半袖を着ている。
自分の時間がかなり止まっているように思えた。
風邪を引き3日間部屋に閉

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横浜駅

階段を降りていた。
駅のホームに続く階段を。
色々なことを考えながら。
いつも履いている厚底の靴で降りていき、無事にホームに辿り着くとホッとする。今日も何も起きなくて良かった、と。
階段に近づくといつもいつもわたしは途中でこけるんじゃないかとか、こけて大怪我をして救急車で運ばれる事態になってしまうんじゃないかという心配で頭がいっぱいになりソワソワしてしまう。
だがこんな日もある。
階段に向かう連絡

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