「おっさんかよ」

 好きなことを聞かれると、「サウナ」と答える。すると毎度「おっさんかよ」って言われる。今、ブームになりつつあるサウナ。そんなサウナが好きになったのは、ブームになり始める少し前に、兄に連れて行かれたことがきっかけだった。

 それまで、サウナは罰ゲームで入る、根性比べ、おっさんが多い、そんなイメージを持っていた。何がいいのかわからないまま、「入り方」があることを知った。

 サウナ→水風呂→休憩(外気浴) ×3〜4セット

 こんなことを言われても、わからなかったから、とりあえず言われた通りに入ってみることにした。入った瞬間、グワッと熱気に包まれ、目の前にはおっさんが数人座っている。同年代はいなかった。座って数分経つと、既に出たくなった。話すことなく、ジリジリと熱せられ、汗が滝のように流れ出ていた。汗が滴る感覚はなんとも言えぬ、気持ち良さだった。6分ほど経過した時、サウナを出て、水風呂に向かった。

 全身汗だくなので、まずはかけ水(マナーなので不可避)で汗を流す。これが最初は凄い冷たい。いざ、入水。冷たくて、呼吸のスピードが一気に早くなった。これの何がいいの理解できずに、とりあえず固まっていた。しばらくすると、フワッと温かい膜のようなものに包まれる感覚になった。後に知ったが、「羽衣」と言うものらしい。羽衣を纏うと、水風呂が少し温かく感じるが繊細なものなので、誰かが水風呂に入ってくると、すぐに破けてしまう。水風呂で少し不思議な感覚を味わった後、露天風呂のスペースにある椅子に向かった。

 体をよく拭き、黙って5〜10分ほど座る。すると、水風呂で冷やされたはずの体が、内側からポカポカし始めた。「何だ、この感覚。なんか気持ちいい。」気持ちいいが、ハマるほどの気持ち良さではない。2セット目も同じような感覚であった。3セット目になると、少し飽きてきて時間の無駄だと思い始めた。


 それもそうだ。6〜8分もサウナに閉じ込められ、1〜2分は水風呂に入り、外で5〜10分の休憩。3セットもやると50分近くかかってしまう。飽き飽きしている中、3セット目の最後の休憩で「それ」は突如訪れた。

 気持ち良さが格段に、跳ね上がった。フワフワとし始め、気持ち良さがどんどんと深まっていく。口角は勝手に上がり、ニヤけ、今まで体験したことない気持ち良さだった。これが、俗に言う「整う」ということである。言葉にすることの出来ない気持ち良さだったから、「やばい」という言葉しか出てこなかった。例えるなら、真夏の暑い日に、コンビニに入った瞬間の気持ち良さの何倍もの気持ち良さだった。ハマる理由が、十二分に理解できた。

 今では、週に2〜3回サウナに通い、サウナに入らないとウズウズしてしまう。サウナに通い始めてから、睡眠の質が良く、イライラすることも減った。サウナに入りに、東京など、時には名古屋まで足を運んだ。よく周りから馬鹿にされるが、僕にとってライブに行く感覚と同じである。

 言葉で説明しても、理解されないことが多いので、最近では連れて行くことにしている。見事に周りの友人もハマり始めている。ブームになり、若い世代も増えてきて、マナーの問題など取り上げられているが、「サウナが好き」と言って、「おっさんかよ」と言われなくなる日はそう遠くないかもしれない。

 

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