電柱に惹かれる僕と不変な電柱.
電柱に惹かれる僕と無言の電柱.
ひとたび歩けば電柱がそこかしこに点在する.
なぜか歩くたびに気になってしまう.気にせずにはいられなくなった.
僕はその佇まいに惹かれる.
電柱はせっせと電気を送っている.けれどもその勤しみは実際にみてみても僕には分からない.「この電柱は一生懸命なのにあの電柱はまったく」なんて思う余地すらなくただ眺めることにつとめるしかない.
僕はその無言で働くその佇まいに憧れている.
電柱は不変だ.
僕にとって電柱は不変だ.
電柱に関する知識もないからその造形を知ることで精一杯.
小中高と電柱を特に意識したことがない「あ、あっこの変圧器の仕様変わってる」とか考えたことがないし,そもそも電柱の整備事情を全く知らない.
当然ながら電柱は人工物なので自生しないし,成長もしない.
最大で電柱があるかないかの意識しかできない僕にとってそこにあるかぎり電柱は不変だ.
機能としての存在から剥離させた電柱の造形美.
僕は電柱を写真におさめた.
写真を加工し,電線を空に還して,電柱の機能として存在価値を打ち消した.
そこには造形として美しく成立する電柱が在った.
電柱はいつも見上げるばかりだ.空をキャンバスとし,太陽光でライティングされる.夜には街灯りが電柱の輪郭を描き,そして変圧器の溝を彫刻する.
そんな電柱にたしかに僕は惹かれている.
のらりくるりと芸術大学中退. 1998年製. 空気を画素におとしこもうと風景をパシャり.二次元(平面)と三次元(立体)の次元間の往来を主題に作品を制作しています.また言語バイアスによる対象からの各個人の情緒レンダリングを試行しております.