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カブトムシとおっさん

夏休みに入った頃だったか、長女(小1)が、いつの間にか知り合いになった近所のおじさんからカブトムシをもらった。

「お主、虫嫌いではなかったか?」

怖いが育ててみたいというのでもらったが、その数10匹(オス1、メス9)。

「お主、一度にもらいすぎではなかろうか?」


ちなみに、私は幼少期こそ昆虫などを捕まえてはいたものの、大人になり、その無邪気さと野蛮さと冒険心は都会のスカイクレイパーの隙間風により、どこかに飛ばされていた。


虫かごは持ち合わせていなかったため、おじさんが段ボールの上部に網を張って、簡易虫かごを作ってくれ、初日はそこで過ごしてもらうことにした。

段ボール・網の壁の向こうは自由。樹木社会と隔てされたカブトムシ。

社会との繋がりを砂、段ボール、仮面などで拒絶された阿部公房の世界。

カブトムシに同情するのは、それが受動的であるからである。



その日の夜、妻から怖い一言。「逃げ出してない?音が近くでするんだけど・・」

簡易虫かごは風除室に置いていたので、屋外に逃げ出すことはないが、風除室内に出ている可能性がある。

急いで現場へ。すると、アルカトラズから2匹逃げ出しているのを目視で確認・・・するや否や、室内にいた妻が笑いながらドアを閉めた。飛んで室内に入ってこないようにと。論理的ではあるが冷徹である。

ダンボール簡易虫かごの中に直接、エサのスイカを置いたのがいけなかった。水分でダンボールの底がふやけて穴が開き、そこから逃げ出したらしかった。

1匹はすぐ捕まえた・・とは言っても、都会に置いてきた無邪気さと野蛮さと冒険心はすぐに戻るはずもなく、BBQ用の炭を挟むトングで、やさしくつまんだ。

もう1匹は不意に飛んだ。ビビった。汗が噴き出た。風呂入ったばかりなのに・・

なんとか格闘しつつも、無事捕獲。


翌朝の土曜。

「カブトムシが逃げてる~‼パパ、起きてっ‼」

最悪の目覚めである。

先日読んだ仏教の本に、『毎朝自分の中でビックバンが起こって、新しい自分が生まれる』というようなことが書いてあった。

全くの逆の朝である。ノストラダムスが予言した地球滅亡級の目覚めである。


どうやら、さらに2匹逃げていたらしかった。朝を迎えた私には、先程否定したが、小さなビックバンが起こっていたのだった。素手で捕まえられたのだ。でも、汗は噴き出た。


その日のうちに虫かごを買いに行ったが、ホームセンターに売ってなかった‼近くのスーパーで1000円で購入。後で発覚したが、全く同じ物が100円ショップで500円で売っていた・・・

100円ショップには、昆虫用ゼリー、枝、下に敷くチップ、コバエ防止の不織布など多彩に置いてあった。

現在、カブトムシ6匹、クワガタ1匹となっている。

3匹は弟夫婦の子供宅へ。1匹は残念ながら死去。

おじさんから新たにもらった転入生の小型クワガタ1匹。


この猛暑のせいか、日中、カブトムシはチップの下へもぐっていることが多い。なので、チップの量を増やした。

と、ここまでの話は1ヶ月ほど前の話。今はまだカブトムシの世話を続けているので、それはまた次回。


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