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「初めまして」で始まる早朝のドライブ。いよいよ見学の朝

今日は、「ブーランジェリードリアン」さん見学の話前半。

店主の田村さんと、何度かメールでやり取りし、ご指定通り広島中心市街地の八丁堀に宿をとっていました。そして見学数日前に、「3時45分ころ、迎えに行けます。どうですか?」と、メールをいただきました。パンを販売する店舗とご自宅が広島市の繁華街八丁堀にあり、薪釜のあるパン工場は、少し離れた場所にあるのです。なんと、迎えに来て頂けるなんて。

3時45分といえば、まだ夜。外に出てみると人通りはほとんどなく、ゴミ収集車だけがテキパキと働いている繁華街。そこにすーっと白い軽のワゴンで現れたのが田村さんでした。「初めましてー! よろしくお願いします、では行きましょうかー」と、すぐに出発。

広島のラジオのコメンテーターも務めている田村さん。緊張していた私も、田村さんの柔らかいトークに乗せられてちょっとリラックス。「広島は大都市なのに、なんだか人がフレンドリーですね」と、街の印象を話すと「ああそれはねー、いまカープが調子いいからですよー。カープがダメな時はみーんな不機嫌ですよ」なんて言う。思いがけないところでまたカープが出てきた。えーっそんなに影響力あるんですか。長野県とはホントに文化が違うなぁ。

10分ほどで工場に到着すると、すでに明かりがともり、ラジオが音量大きめで流れていた。研修生の方が、すでに準備に取りかかっていたところ。田村さんは3か月ごとに研修生を採用されていて、研修生は、3か月で生地の仕込みから薪釜での焼成まで、それだけじゃなく経営のことまですべてを教わることができる。ちなみに田村さんの母上の賄い付き。かなりうらやましい。

私が行った日は、ちょうど研修生が入れ替わり、新しい方が来て3日目。「まだ慣れてないんで、かなりバタバタすると思います」と言われていたので、とにかく邪魔にならないように、見学に徹しようと決めた。

粉には温度計が刺され、大きな鍋にお湯が沸いている。目標こねあげ温度から加える水の温度が算出され、粉と水が合わさってミキサーで回り始める。ミキサーが回り始めると、薪釜の加熱。ねじった新聞紙と交差するように置かれた薪に火がつけられ、すごいスピードで薪を釜と平行に詰め込んでいく。ぎっしり薪が詰め込まれ勢いよく燃え始めると、またミキサーに戻り、前日仕込んだパン種と塩を加えて生地を作っていく。

その日仕込まれた生地は3種類。カンパーニュ、カンパーニュより白っぽい「ブロン」というパン、それに豆乳と発酵バターで仕込むブリオッシュ。途中、ブロン生地にくるみといちじくを加えて「くるみいちじく」も作ったが、基本の生地は3種と、ごくごく少ない。生地作りに使われるのは、大きなミキサーひとつだけ。こねあげられた生地は、両手で抱えるほどの大きさのボウルに移され、そのまま棚に置いて休ませる。

生地を仕込みながらも、20分おきに薪を足していく。タイマーが鳴って薪釜を開けると、先ほど詰めた薪が燃え尽きる寸前。そこにまた薪をギッチリ詰める。

薪を足す作業を3回ほど繰り返し、窯の温度を確認すると、右奥が370℃、左奥が345℃にもなっていた。

薪の炎を薪釜の隅々まで行きわたらせるための「グラ」と呼ばれる道具がある。25キロもあるそれを取り出し、次は薪釜の掃除。長い棒の先に取り付けられた雑巾を濡らし、それを釜の中でグルングルンと勢いよく振り回す、豪快で楽しそうな作業。これで、薪釜の中にたまった灰が水蒸気と共に煙突から出ていくのだそうだ。

ここで、小休止がはいった。田村さんのお母さんの手作り朝ごはん。小さめのおにぎり9個がひとつに盛られ、銘々皿にさんまの塩焼きとピーマンの炒め物、プチトマトと茹でた空豆。ぱっと見て田村さんが「おにぎり、ひとりノルマ3個ですね」と言って笑わせる。見学者にまで、賄いをいただけるなんて、なんだかとても申し訳ない。でも、この分け隔ての無さが田村さんなんだなと思った。気持ちが温かくなる朝食だった。

作業中なので、急いで食べる。そのうちに薪釜の温度が少し下がって300℃になったら、生地の釜入れのタイミング。前日に成型してバヌトン(パン籠)の中に寝かされた生地が、冷蔵室から取り出される。車輪付きの大きなルミナスの棚に、ずらりと並ぶパン生地。棚ごとコロコロ転がして、薪釜のすぐそばに。

これから釜入れ!!! 見たかった瞬間だ。

satomi

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