馬楽の時間 85

 ハミを嫌って下へ下へと引いてきても抵抗せずに手綱を伸ばします。しばらくしたら、次は口に触ってみます。相変わらず引いてきます。今度は完全に許してしまわず、口に触り続けます。手綱が弛まないようにします。
 これが難しい。馬は頭を下げたり上げたりするので、頭を上げた時手綱が弛むのです。弛むと次に下げた時ガツンとぶつかります。
「なんだ、やっぱり引っ張るのか」と馬はそっぽを向いてしまいます。
 学生には地上で教えます。手綱を持って引き合うのです。同じ力を保つのは難しいです。私がいなくても、仲間と地上で練習する子は上手くなります。これが神の拳です。
 同じ力であれば少し強くても不快ではありません。弱くてもカツンカツンとぶつかる方がイライラします。神の拳で丁寧にやってあげると、馬は落ち着いてきます。リラックスし動きも柔らかくなります。頭の中がリラックスし始めたのです。
 ここまでを丁寧にやってあげると、後が楽です。
 馬にも色々言い分があります。「全部話してごらん」。カウンセリングです。相手の言い分を否定しないことです。私たちも話を聞いてほしい時あるでしょう。何か言うと、それはこうだとやられると何も言えなくなりますよね。別に正論を聞きたいわけじゃない。正論は知っている。ただ聞いてほしいのです。馬も同じです。


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